財務モデリングの資格は必要?AFMとFMVAの違いと転職で評価されるスキル

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財務モデリングの資格を調べているものの、本当に転職で役立つのか、AFMとFMVAのどちらを選べばよいのか、独学でも身につくのかと迷っていませんか。

結論からお伝えすると、財務モデリングの資格は学習を体系化するうえで役立ちますが、FASや投資銀行の採用で重視されるのは資格名よりも、自力でモデルを組み、置いた前提を説明できる実技力です。この記事では、AFMとFMVAの違いや既存の会計系資格との関係を整理したうえで、採用の実情、目的別の学習の選び方、資格と並行して進めたい実技習得のステップ、学習成果を転職活動で伝える方法まで順に解説します。読み終える頃には、自分に合う資格と学習の順序が決められる状態になります。

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目次

財務モデリングの資格を検討する前に知っておきたいこと

財務モデリングとは|会計や簿記との違い

財務モデリングとは、企業の将来の売上や費用、キャッシュフローをExcel上で予測し、企業価値評価(バリュエーション)につなげるスキルです。簿記や会計が過去の取引を正しく記録して整理する作業であるのに対し、財務モデリングは前提条件を置いて未来を数値化する作業といえます。

土台となる損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の仕組みは、簿記の知識がそのまま活きます。一方で、売上を何で動かすか、設備投資をどう織り込むかといった前提の設計は、簿記にはない考え方です。財務3表を連動させ、前提を変えれば結果も変わるモデルを組むことが、この分野の基本になります。

資格で学べることと、資格だけでは伝えにくいこと

財務モデリングの資格を学習すると、モデルの標準的な設計手順やExcelの操作、会計とファイナンスの知識を体系的に身につけられます。独学では抜けやすい論点を網羅でき、学習の進み具合が見える点も利点です。

ただし、採用側が面接で確認したいのは、白紙のExcelから自力でモデルを組み、置いた前提を説明できるかという実技力です。資格は学習したことの証明にはなりますが、前提を自分で考える力や、他者に説明して納得してもらう力までは、資格名だけでは伝わりにくいのが実情です。資格をゴールにせず、学習の体系化と動機づけの手段として位置づけると、無理のない使い方ができます。

資格取得が向いている人、先に実技練習を始めた方がよい人

学習の順序は、現在の知識と目的の組み合わせで決めるのが合理的です。簿記や経理の経験があり、転職までに一定の期間を確保できる人は、資格学習を軸にして知識の抜けを埋めながら実技を伸ばす進め方が向いています。

一方、FASや投資銀行の選考がすでに視野に入っている人や、実務でモデルを扱う機会がある人は、資格より先に3表連動モデルを自力で組む練習を始めた方が、選考や業務に直結します。会計やExcelの基礎に不安がある人は、どちらに進む場合も先に本や動画で基礎を固めることが遠回りを防ぐ近道です。資格と実技は対立するものではなく、順序を工夫して組み合わせるものです。

財務モデリングの代表的な資格|AFMとFMVAの違い

AFM(Advanced Financial Modeler)|FMIが実技試験でモデル構築力を評価

AFMは、Financial Modeling Institute(FMI)が認定する財務モデリングの資格で、Advanced Financial Modelerの略称です。最大の特徴は、制限時間内にケース資料をもとにExcelで3表連動モデルを自力で構築する、実技形式の試験であることです。

選択式や穴埋め式の暗記型試験とは異なり、テンプレートは与えられず、整合性のとれたモデルを完成させる力そのものが評価されます。そのため、学習は知識の暗記ではなく、手を動かして組む練習が中心になります。

試験は英語で実施されます。受験料や試験日程は変更されることがあるため、最新情報はFMIの公式サイトで確認してください。

FMVA(Financial Modeling & Valuation Analyst)|CFIの講座と試験で体系的に学ぶ

FMVAは、Corporate Finance Institute(CFI)が提供する認定プログラムで、Financial Modeling & Valuation Analystの略称です。オンラインのコースを順に受講し、各コースの課題と最終試験に合格することで認定を受ける、学習型の資格です。

範囲はモデリングにとどまらず、会計の基礎、Excelの操作、企業価値評価、感度分析まで広くカバーしています。AFMが構築力を試験で評価する資格であるのに対し、FMVAは講座を通じて一連のスキルを習得する資格という性格の違いがあります。動画で手順を追いながら学べるため、独学の延長線上で取り組みやすい資格です。

比較|試験形式、学習範囲、言語、学習スタイルの違い

AFMとFMVAは、どちらが優れているかではなく、何を身につけたいかで選び分ける資格です。AFMは実技試験で構築力を証明したい人、FMVAは講座で知識から実技まで順に学びたい人に向いています。

両者はいずれも英語ベースで、日本語のみで完結する公式教材は現時点では一般的ではありません。主な違いを以下の表に整理します。

比較軸AFMFMVA
運営団体FMICFI
形式実技試験でモデルを構築講座受講と最終試験
範囲3表連動モデルの構築会計、Excel、評価、分析
言語英語英語
向く人実技力を証明したい人体系的に学びたい人

簿記、証券アナリスト、CFA、USCPAとの位置づけの違い

簿記や証券アナリスト、CFA、USCPAといった会計系やファイナンス系の資格と、財務モデリングの資格は、補完し合う関係にあります。簿記は会計の仕組み、証券アナリストやCFAは投資やバリュエーションの理論、USCPAは会計基準と監査の知識を証明する資格です。

これに対してAFMやFMVAは、それらの知識をExcel上で動くモデルとして形にする実技を対象にしています。採用市場での認知度は、日本ではCFAやUSCPAの方が高く、財務モデリングの資格はまだ広く知られているとはいえません。優劣ではなく、知識の証明と構築力の証明という役割の違いで捉えると、自分に足りない部分が見えてきます。

財務モデリングの資格は転職で評価される?FASや投資銀行の採用の実情

採用で見られるのは資格名よりも「自分で組めるか」

FASや投資銀行、PEファンドの採用では、資格の有無よりも、実務経験や選考課題で示される実技力が重視される傾向があります。職務経歴書に資格名が一行あるだけでは、どの水準でモデルを組めるのかが採用側に伝わらないためです。

これは資格が無意味だという意味ではありません。資格は学習の証明、実技は能力の証明という役割の違いがあり、採用側は後者を直接確認したいと考えています。

実務経験がない場合でも、自分で組んだモデルとその前提を説明できれば、資格名より具体的な評価材料になります。資格学習で得た知識を、組める力として示す準備まで含めて考えることが、転職での評価につながります。

資格が役立つ場面と、過度に期待しない方がよい場面

資格が役立つのは、未経験の分野へ挑戦する際に学習意欲と基礎知識を示す場面や、職務経歴書で学習内容を具体的に書く場面です。特にFASや経営企画の求人で、応募者の中にモデリングの学習経験がある人が少ない場合、資格は他の応募者との差を示す材料になります。

一方で、資格名だけで書類選考や面接を通過できると期待するのは現実的ではありません。採用担当者が資格の内容を知らないことも多く、どんな試験で何を証明したのかを自分の言葉で補足する必要があります。資格はきっかけであり、その先にある選考課題や実務で力を発揮できるかが問われると理解しておくと、学習の目的を見失わずに済みます。

選考で課される「モデリングテスト」とは

モデリングテストとは、FASや投資銀行の中途採用で課される実技課題で、公開資料や与えられた前提をもとに、制限時間内にExcelでモデルを組む形式が一般的です。出題例としては、企業の過去数期分の決算数値から財務3表を予測する課題や、DCF法で企業価値を算定する課題があります。

資格試験は学習内容の習得度を測るのに対し、モデリングテストは応募先の実務でそのまま使える力があるかを見る点が異なります。完成したモデルの正確さに加え、前提の置き方やその説明が評価されることが多く、暗記では対応できません。資格学習と並行して、時間を計って自力で組む練習を重ねることが、最も直接的な対策になります。

目的や経験別|財務モデリング資格と学習の選び方

経理や会計の経験者(簿記保有者)

簿記や経理の経験者にとって最初の壁は、過去の記帳知識を将来予測に接続することです。仕訳や決算整理の理解は十分でも、来期の売上をどう置くか、減価償却や借入をどう予測に反映するかという考え方は、簿記では扱いません。

このため、学習は財務3表の予測と連動を重点的に進める順序が効率的です。勘定科目の意味や貸借の仕組みなど、簿記で身についている部分は省略して構いません。

その分、売上ドライバーの設計やキャッシュフローの予測に時間を使うと、短期間で実務に近い水準へ到達できます。簿記で培った正確さは、モデルの整合性を保つうえで大きな強みになります。

FASや投資銀行、PEの志望者

FASや投資銀行、PEファンドを志望する人は、応募先の業務内容と選考課題から逆算して学習計画を立てることが重要です。これらの職種では、M&Aや企業価値評価の場面でゼロからモデルを組む力が求められるため、AFMのような実技型の学習と相性がよいといえます。

資格取得を目指す場合も、合格そのものを目的にせず、並行してモデリングテストの対策を進める考え方が有効です。具体的には、3表連動モデルの構築からDCF法、LBOモデルまでを、時間を計って繰り返し組む練習が選考に直結します。資格と実技練習を同じ期間に進めることで、学習内容が選考課題にそのまま活きる状態をつくれます。

経営企画やFP&Aの志望者

経営企画やFP&Aの業務では、予算策定や業績予測、投資判断の材料づくりが中心になるため、学習の重心はDCF法よりも事業計画モデルやシナリオ分析に置くのが適切です。事業ごとの売上と費用を変数で設計し、前提を変えたときに利益やキャッシュがどう動くかを示せる力が、社内の意思決定で求められます。

資格の中では、FMVAのように予測(forecast)や分析(analysis)を幅広く扱うプログラムの方が、業務との重なりが大きい傾向があります。一方で、経営層に説明する場面が多いため、モデルの精緻さ以上に、前提を分かりやすく伝える力を意識して学習すると、実務での評価につながります。

会計やExcelの初心者

会計やExcelの基礎に自信がない人は、資格より先に基礎を固める方が結果的に近道です。財務モデリングの資格や講座は、損益計算書と貸借対照表のつながりや、Excelの参照、関数の基本操作を理解している前提で進みます。

基礎が不十分なまま進むと、教材の内容が頭に入らず、途中で挫折しやすくなります。まずは簿記の入門書で会計の仕組みを理解し、Excelの関数とショートカットを本や動画で練習する段階を設けてください。

財務モデリングの入門書を1冊読み、簡単な3表連動を自分で再現できたら、資格や講座に進む準備が整ったと判断できます。無理のない順序で進めることが、学習を続けるうえで最も大切です。

受験前に確認したい基礎スキルと難易度の捉え方

会計|財務3表のつながり

財務モデリングの出発点は、損益計算書(Income Statement)、貸借対照表(Balance Sheet)、キャッシュフロー計算書の3表がどのように連動するかを、自分の言葉で説明できることです。当期純利益が利益剰余金に加算され、減価償却費が非資金費用としてキャッシュフローに戻され、設備投資が固定資産と投資キャッシュフローに反映されるといった流れを、数値の例で追えるかが目安になります。

ここが曖昧なままモデルを組むと、貸借が一致しない原因を特定できません。簿記2級程度の知識があれば土台は十分ですが、不安があれば資格学習の前に補っておく判断が、結果的に学習時間を短縮します。

Excel|参照、ショートカット、エラーチェック

財務モデリングでは、思考に集中するためにExcelの操作を無意識にできる水準まで習熟する必要があります。確認しておきたい操作は次のとおりです。

  • 絶対参照と相対参照の使い分け
  • 主要な関数(SUM、IF、INDEX、MATCHなど)の活用
  • マウスを使わない移動、選択、書式設定のショートカット
  • 数式のトレースや検算用チェックセルによるエラー確認

実技試験やモデリングテストでは時間が限られるため、操作の遅さがそのまま減点につながります。

日常業務でもマウスを使わない操作を意識し、指が自然に動く状態を目指してください。操作の習熟は、学習の初期に取り組むほど効果が大きい領域です。

ファイナンス|キャッシュフローと企業価値評価の基礎

財務モデリングの後半では、フリーキャッシュフロー、割引率(WACC)、継続価値といったファイナンスの概念が前提になります。会計が利益を扱うのに対し、企業価値評価(バリュエーション)はキャッシュを扱うという違いを理解していないと、DCF法の計算が形式的な作業になってしまいます。

最低限、営業利益からフリーキャッシュフローを導く手順、資本コストの考え方、DCF法の基本構造を説明できる状態にしておくと、資格教材の内容が理解しやすくなります。ファイナンスの入門書で概念を押さえてから、モデル上で数値として確認する順序が効率的です。会計とファイナンスの違いを意識することが、理解度を左右します。

英語|教材や設問、財務用語への備え

AFMやFMVAをはじめとする主要な財務モデリング資格は、教材と試験が英語で提供されています。求められる英語力は、会話力よりも財務用語を正確に読み取る力です。

Revenue、COGS、Working Capital、Depreciation、Free Cash Flowなど、財務3表とバリュエーションで頻出する用語を英語で覚えておくと、設問の理解が大きく楽になります。日本語の書籍で概念を理解した後に、英語の用語集や英語版の財務諸表を読んで対応関係を確認する準備が現実的です。英語に不安がある場合は、英語教材で学ぶこと自体を、海外案件で使える語彙を増やす機会と捉えると、負担を前向きに受け止められます。

財務モデリングは独学できる?本、動画、講座の使い分け

本で学べること|会計やファイナンスとモデル設計の考え方

財務モデリングは、基礎段階であれば独学で十分に進められます。特に、会計とファイナンスの概念理解や、モデルをどう設計するかという考え方は、書籍が向いている領域です。

本を選ぶ際は、演習用のExcelファイルが付属しているか、数式の意味まで丁寧に解説されているか、実在企業や現実的なケースを題材にしているかを確認してください。理論だけの本は分かった気になりやすいため、手を動かしながら読める構成のものが適しています。

財務モデリングの入門書を1冊、ファイナンスの基礎を扱う本を1冊組み合わせると、資格学習や講座に進む前の土台として十分です。読んだ内容をすぐにExcelで再現する習慣が、本の価値を高めます。

動画やUdemyで学べること|操作手順と構築の流れ

モデルを組む工程そのものは、文章よりも動画の方が理解しやすい領域です。Udemyなどのオンライン講座では、講師の画面操作を見ながら、3表連動からDCF法までの構築の流れを追体験できます。

講座を選ぶ際は、実在企業の公開資料を扱っているか、完成版のExcelファイルが付属しているか、操作だけでなく前提の置き方まで説明しているかを確認すると、学習効果が高まります。動画は受け身になりやすいため、一度視聴した後に講師の画面を見ずに同じモデルを自力で再現する練習を必ず組み合わせてください。操作の手順を覚える段階では動画、考え方を深める段階では本というように、教材の特性で使い分けると無駄がありません。

独学で身につきにくいこと|前提の設定と説明力

独学は基礎の習得に有効ですが、身につきにくい領域もあります。代表的なのは、正解のない前提をどう置くかという判断と、組んだモデルを他者に説明して納得してもらう力です。

教材のモデルは前提が与えられているため、売上成長率や利益率を自分で根拠をもって設定する経験は積みにくくなります。また、自分のモデルの誤りや分かりにくさは、第三者からの指摘で初めて気づくことが多く、独学ではこの機会が得られません。独学で3表連動まで到達した後は、自作モデルを経験者に見てもらう、前提を声に出して説明する練習をするなど、意識的に他者の視点を取り入れる工夫が必要です。

講座や資格を使うかどうかの判断基準

講座や資格に投資するかどうかは、独学で到達した地点と、次に必要なものを照らして判断するのが合理的です。独学で3表連動モデルを組めるようになり、次の壁が前提設定の判断力や時間内に組み切る速さであれば、課題と添削のある講座や、実技試験のある資格が有効な手段になります。

逆に、まだ会計やExcelの基礎が固まっていない段階で高額な講座に進むと、内容を活かしきれません。費用対効果は、金額そのものより、その投資で選考や実務の課題が解決するかで測ると判断を誤りにくくなります。目的が転職であれば、応募先の選考内容に講座の内容が対応しているかを基準にしてください。

資格と並行して進めたい実技習得のステップ

STEP

財務3表のつながりをExcelで再現する

最初の練習は、簡単な数値例を使って、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書をExcel上で連動させることです。売上と費用から利益を計算し、利益が利益剰余金に加わり、減価償却や運転資本の変動を経てキャッシュが動き、現金残高が貸借対照表に戻る流れを、自分の手で数式として組んでみてください。

ここで必ず確認したいのは、資産の合計と負債純資産の合計が一致することです。一致しない場合は、どの項目のつながりが抜けているかを追う作業そのものが学習になります。この段階で3表のつながりを体で理解しておくと、以降のステップで複雑な論点を加えても全体像を見失いません。

STEP

実在企業の公開資料から過去の数値を整理する

次に、興味のある上場企業の有価証券報告書や決算短信から、過去数期分の財務3表をExcelに入力し、構造を把握します。実在企業を題材にする意義は、教材の整った数値とは異なり、科目の分類や注記の読み取りに迷う経験ができることです。

入力した数値から売上成長率、利益率、運転資本の回転期間、設備投資の水準などを計算し、その企業の特徴を数字で説明できるようにしてください。この作業を通じて、予測の前提となる過去の傾向が見えてきます。有価証券報告書を読む力は、FASや投資銀行の実務でも日常的に使うスキルであり、学習と実務の距離を縮める効果があります。

STEP

売上や費用のドライバーと予測の前提を設定する

過去の数値を整理したら、将来を予測するための変数(ドライバー)を設計します。売上であれば、販売数量と単価、店舗数と店舗あたり売上、顧客数と単価など、その事業の実態に合う分解を考えます。

費用も、売上に連動する変動費と固定的に発生する費用を分けて前提を置きます。ここで重要なのは、なぜその前提にするのかを過去の傾向や事業環境から説明できることです。

資格試験では前提が与えられることが多い一方、実務やモデリングテストでは自分で前提を置く力が問われるため、この工程が最も差のつく部分になります。置いた前提を文章で書き出しておく習慣が、後の説明力につながります。

STEP

運転資本や設備投資、借入を組み込み整合性を検証する

基本の予測ができたら、運転資本、設備投資と減価償却、借入金の返済スケジュールと支払利息を組み込み、より実務に近いモデルへ発展させます。この段階でつまずきやすいのは、貸借対照表が一致しない、キャッシュの符号が逆になる、支払利息と現金残高の間で循環参照が発生するといった論点です。

検証の手順としては、貸借の差額を表示するチェックセルを設け、項目を一つ追加するたびに一致を確認する進め方が確実です。循環参照については、反復計算の設定や平均残高を使わない簡便な方法を理解しておくと対処できます。エラーの原因を自力で特定する経験が、実技試験での対応力を高めます。

STEP

DCFと感度分析、シナリオ分析へ進む

3表の予測が整合したら、フリーキャッシュフローを算出し、割引率と継続価値を設定してDCF法による企業価値評価へ進みます。算出した企業価値は、前提の置き方で大きく変わるため、割引率や成長率を変化させたときの結果を表にする感度分析と、楽観や悲観といった複数のシナリオで結果を比較するシナリオ分析まで行ってください。

この練習を通じて、企業価値は一つの数値ではなく前提に依存する幅として捉える感覚が身につきます。FASや投資銀行の実務では、この幅と根拠をクライアントに説明する場面が多く、ここまで到達すると学習内容が実務の水準に近づきます。

STEP

見本を見ずに再構築し、前提と結果を説明する

最後のステップは、完成したモデルを閉じ、白紙のExcelから時間を計って同じモデルを自力で組み直すことです。最初は時間がかかっても、繰り返すうちに構造が頭に入り、操作の迷いが減っていきます。

さらに、組み上げたモデルについて、置いた前提、算出した結果、モデルの限界の3点を、第三者に向けて口頭で説明する練習を加えてください。この練習は、AFMのような実技試験の対策であると同時に、採用選考のモデリングテストと面接の対策にもなります。資格学習と選考対策を別々に行うのではなく、この再構築と説明の練習で一本化すると、限られた時間を効率よく使えます。

学習成果を転職活動で伝える方法

求人票から資格、実務経験、スキル要件を読み取る

転職活動では、まず求人票に書かれた要件を正確に読み解くことが出発点です。財務モデリング経験歓迎という表記は、企業によって、3表連動モデルを自力で組める水準を指す場合もあれば、既存モデルの更新経験で足りる場合もあります。

必須要件と歓迎要件を分け、資格、実務経験、スキルのどれを指しているかを整理したうえで、自分の状況と照らしてください。業務内容の欄に企業価値評価やM&A支援と書かれていればDCF法やLBOモデルの力、予算策定や業績管理と書かれていれば事業計画モデルの力が求められると推測できます。求人票の読み取りが、学習の優先順位と応募の判断を決める材料になります。

職務経歴書で取得済み資格、学習中の内容、実務経験を区別して書く

職務経歴書では、取得済みの資格、現在学習中の内容、実務で担当した経験を混同せずに書き分けることが信頼につながります。資格は正式名称と取得時期を記載し、学習中の内容は到達した段階を具体的に示します。

たとえば、実在企業の公開資料から3表連動モデルとDCF法による企業価値評価を自主制作した、といった書き方です。実務経験は、担当した業務の範囲と、モデルの構築から更新までのどこまで関わったかを明確にします。

財務モデリングという言葉だけでは水準が伝わらないため、何を、どの程度、自力で行えるかを示す書き方を意識してください。誇張せず正確に書くことが、面接での深掘りに耐える土台になります。

公開情報で自主制作したモデルを学習成果として整理する

資格名の一行より採用側に伝わりやすいのが、自分で組んだモデルとその前提の説明です。実在企業の公開資料を題材に、3表連動からDCF法までを自力で構築したモデルを整理し、前提の根拠と結果の解釈を簡潔にまとめておくと、面接で学習成果を具体的に示せます。

この方法は、実務経験がない人でも実技力を示せる点に価値があります。面接でモデルを見せる機会がなくても、どの企業を題材に、どんな前提を置き、どんな結果になったかを口頭で説明できるだけで、学習の深さが伝わります。資格学習と並行して成果物をつくり、説明できる状態で選考に臨む考え方は、他の応募者との差別化につながります。

面接で前提条件、分析結果、モデルの限界を説明する

面接では、モデルの結果そのものよりも、なぜその前提を置いたのかという思考の過程が問われます。事前に、前提条件、分析結果、モデルの限界の3点で整理しておくと、どの角度から質問されても落ち着いて答えられます。

前提条件では、売上成長率や利益率の根拠を過去の実績や業界動向から説明します。分析結果では、算出した企業価値の水準と、感度分析で見えた前提の影響度を示します。

モデルの限界では、取り込めなかった要素や不確実性の高い部分を正直に述べます。限界を自分から説明できる応募者は、実務での報告姿勢も信頼できると評価されやすく、自信を持って話す材料になります。

資格取得を待つか、応募を進めるか

資格の取得を転職の前提条件と考えすぎる必要はありません。募集要件と自分の準備状況によっては、学習中の段階でも応募は可能です。

特に、実務経験や会計系の資格がすでにあり、財務モデリングの学習が進んでいる人は、資格の合格を待つ間に募集が終わってしまう方が機会損失になります。一方で、選考にモデリングテストがある企業へ応募する場合は、3表連動モデルを時間内に組める水準に達してから応募した方が、結果につながりやすくなります。

判断の軸は、資格の有無ではなく、応募先の選考で求められる実技力に自分が達しているかどうかです。学習と応募を並行させる柔軟さが、転職活動の期間を短縮します。

財務モデリングの資格に関する質問と回答

日本語だけで学習や受験ができる資格や講座はありますか

AFMやFMVAといった主要な財務モデリング資格は、教材と試験が英語で提供されているため、日本語のみで受験まで完結させることは現時点では難しいのが実情です。ただし、学習の大部分は日本語で進められます。

財務モデリングの入門書やファイナンスの解説書は日本語で複数出版されており、Udemyなどのオンライン講座にも日本語のコースがあります。現実的な進め方は、日本語の本と講座で概念と構築手順を理解し、財務用語を英語で確認したうえで、必要に応じて英語ベースの資格に挑戦するという順序です。資格にこだわらない場合は、日本語教材だけでも実務水準の実技力は十分に身につけられます。

簿記2級があれば財務モデリング資格に挑戦できますか

簿記2級の知識は、財務3表のつながりを理解するうえで十分な土台になります。勘定科目の意味、仕訳と決算の流れ、損益計算書と貸借対照表の関係を理解している点は、学習の大きな強みです。

ただし、資格に挑戦するには、簿記にはない要素を追加で学ぶ必要があります。具体的には、将来の数値を予測する考え方、フリーキャッシュフローやDCF法などのファイナンスの基礎、そして参照や関数、ショートカットといったExcelの実技です。

簿記2級の知識を起点に、3表連動モデルの構築練習とファイナンスの入門書を組み合わせれば、資格学習に進む準備は整います。会計の基礎がある分、学習時間を実技に集中できる点は有利です。

未経験から資格を取得すればFASや投資銀行に転職できますか

資格の取得は転職の後押しになりますが、それだけで採用が決まるわけではありません。FASや投資銀行の採用では、実務経験、選考課題での実技力、面接での説明力が合わせて見られます。

未経験の場合、資格は学習意欲と基礎知識の証明として評価される一方、選考ではモデリングテストや面接でその力を直接示す必要があります。したがって、資格学習と並行して、実在企業を題材にした自主制作モデルをつくり、前提と結果を説明できる状態にしておくことが重要です。会計系の資格や経理の経験がある人は、未経験でもポテンシャルを評価されるケースがあるため、資格を一つの要素として、総合的な準備を進めてください。

まとめ|目的に合う資格と実技練習を組み合わせる

資格は学習の体系化に役立ち、転職では実技と説明力が問われる

財務モデリングの資格は、AFMのように実技試験で構築力を評価するものと、FMVAのように講座で体系的に学ぶものがあり、目的に応じて選び分けるものです。資格学習は、知識の抜けをなくし、学習を続ける動機づけとして役立ちます。

一方で、FASや投資銀行、PEファンドの採用では、資格名よりも、自力でモデルを組めるか、置いた前提を説明できるかが重視されます。したがって、資格をゴールにするのではなく、実在企業を題材にした自主制作モデルと、前提を説明する練習を並行して進めることが、学習と転職の両方で成果につながる進め方です。資格と実技は対立するものではなく、組み合わせて使うものだと理解しておいてください。

今日から着手できる次の一歩

この記事を読み終えたら、次の3つのうち自分に合うものから着手してください。会計やExcelの基礎に不安がある人は、財務3表のつながりを自分の言葉で説明できるか確認し、不足があれば入門書で補います。

基礎がある人は、簡単な数値例で3表連動モデルをExcelで組み、貸借の一致を自分で確認する練習を始めます。転職を具体的に考えている人は、志望先の求人票を読み、求められる資格、実務経験、スキルを整理したうえで、資格学習と実技練習のどちらを優先するかを決めます。小さな一歩でも、手を動かし始めることが、財務モデリングの資格と実技力の両方を身につける最短の道になります。

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