財務モデリングの本はどれを選ぶ?目的別の読む順番とExcelで形にする手順

財務モデリングの本を買ったものの、いざExcelを開くと手が止まってしまった経験はないでしょうか。原因は本の質でも自分の理解力でもなく、会計やファイナンスの知識と、白紙のシートに数式を組む技術が別物だからです。
この記事では、会計未経験者からFAS・投資銀行・PEファンド志望者まで、レベル別におすすめの本6冊を紹介したうえで、目的別の読む順番、本で学んだ内容をExcelで形にする3つのステップ、貸借対照表が合わないときや循環参照が出たときの確認方法まで解説します。本の紹介で終わらず、自分でモデルを組んで前提を変えて説明できる状態になるための道筋をまとめました。
財務モデリングの本を探す前に知っておきたいこと
財務モデリングとは何か|本で身につく力と求められる場面
財務モデリングとは、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の財務三表や事業計画をExcel上で数式によって連動させ、売上成長率や利益率といった前提を変えたときに企業の利益や資金繰り、企業価値がどう動くかを示す技術です。FAS、投資銀行、PEファンド、経営企画、スタートアップの財務担当など、将来の数値をもとに意思決定を支える業務で必要とされます。
本で身につくのは、三表がつながる仕組み、シート設計の基本ルール、DCFやLBOといった分析手法の考え方です。一方で、実際にモデルを組む手さばきは、本を読んだあとに自分で手を動かして初めて定着します。

理論書を読んでもExcelが組めない理由
財務モデリングの本を買ったのに、Excelを開くと手が止まるという声は多く聞かれます。原因は本の質ではなく、会計やファイナンスの知識と、白紙のシートに数式を組む技術が別のスキルだからです。企業価値評価の名著を読んで理論を理解しても、どのセルに何を入力し、どの順番で三表をつなぐかは書かれていません。
著者の多くは実務家や研究者であり、初心者がつまずく細かな操作やエラー対処は省略されがちです。最初の一冊で挫折した人は、自分の理解力ではなく、理論と実践の距離が原因だったと捉え直すと、次に選ぶ本と学習方法が変わります。

本で学べる範囲と、別の手段で補う範囲
本が得意なのは、体系的な知識と再現性のあるルールを示すことです。三表のつながり、入力・計算・出力を分けるシート設計、数式を統一する作法などは、文章で読んだほうが整理して理解できます。反対に本が苦手なのは、操作の流れとフィードバックです。ショートカットを使った実際の手さばきや、自分が作成したモデルが実務で通用する水準かどうかの判断は、テキストだけでは確認しにくい部分です。
この切り分けを先に押さえておくと、本に求めすぎて失望することがなくなり、動画講座や第三者の確認といった補完手段を、どの段階で使えばよいかが判断しやすくなります。
財務モデリングの本を選ぶときに確認したい4つのポイント
会計・ファイナンス・Excelの前提知識が自分に合っているか
財務モデリングには、会計、ファイナンス、Excelの3つの前提知識が関わります。どれが足りないかによって、最初に読む本は変わります。目安として、会計は貸借対照表の資産と負債・純資産がなぜ一致するかを説明できるか、ファイナンスは割引現在価値の考え方を知っているか、Excelは絶対参照と相対参照を使い分けられるかで確認してみてください。
3つのうち2つ以上が不安であれば、モデリング専門書の前に会計の入門書から入るほうが結果的に早く進みます。背伸びをして難しい本から始めると、どこが分からないのかも分からない状態になりやすく、挫折の典型的なパターンになります。
財務三表・事業計画・DCF・LBOのどこまで扱っているか
財務モデリングの書籍は、到達点が本によって大きく異なります。三表を連動させる基本モデルまでを丁寧に扱う本もあれば、三表モデルを前提としてDCF法による企業価値評価やLBOモデルまで進む本もあります。経営企画や事業計画の作成が目的であれば、三表連動と前提設計まで学べれば実務の多くに対応できます。
一方、FASや投資銀行、PEファンドを志望する場合は、企業価値評価やLBOまで扱う本が最終的に必要になります。目次を見て、自分の目的に対してどこまでの範囲が書かれているかを確認し、現在のレベルより一段上を狙う本を選ぶと、無理なく読み進められます。


Excelで再現できる演習やサンプルファイルがあるか
財務モデリングの本は、読んで終わりでは身につきません。実際に手を動かせる構成になっているかを必ず確認してください。確認したい項目は次の4点です。
- 章ごとに演習があるか
- Excelのサンプルファイルをダウンロードできるか
- 完成版のモデルが付属しているか
- 出版社サイトで正誤表が公開されているか
サンプルファイルがあれば、本の説明と自分の数式を照らし合わせながら進められるため、独学でも誤りに気づきやすくなります。逆に、理論の説明が中心で演習がない本は、知識の整理には役立ちますが、構築の練習には別の教材が必要になると割り切って選ぶことが大切です。
紙と電子、どちらが学習スタイルに合うか
財務モデリングの学習は、PCでExcelを開きながら本を参照する場面が多くなります。そのため、紙と電子のどちらを選ぶかは、自分の作業環境に合わせて判断するのが現実的です。紙の本は、机の上に開いたまま置けて図表を一覧しやすい反面、持ち運びには向きません。電子書籍は、デュアルモニターやタブレットで並べて表示でき、検索もできますが、書籍によっては図表やセルの色分けが見づらいことがあります。
Amazonなどで購入前にサンプルを確認し、数式や表が読み取れるかを見ておくと失敗が減ります。どちらが良いと決めつけず、通常どこで学習するかを基準に選んでください。

【レベル別】財務モデリングのおすすめ本6選
新版 財務3表一体理解法|財務三表のつながりを理解する入門書

國貞克則氏の著書で、朝日新書から出版されている会計入門の定番です。会計未経験者が財務モデリングを学ぶ前に最初に読む一冊として位置づけられます。損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書が1つの取引でどのように同時に動くかを、仕訳を使わずに説明しているため、簿記の知識がなくても三表が連動する仕組みを理解できます。
この理解がないまま数式を組むと、貸借対照表が合わない理由を自分で追えません。価格も新書のため手に取りやすく、Excel操作は扱っていないので、読み終えたら操作や構築は別の本で補う必要があります。
- 対象読者:会計未経験者、三表のつながりがあいまいな人
- 前提知識:不要
- 学べること:財務三表が連動する仕組み、利益と現金の違い
- 演習の有無:Excel演習なし
- 補う内容:Excelでの作法と構築手順
外資系金融のExcel作成術|表の見せ方とモデルの基本作法を学ぶ

慎泰俊氏の著書で、東洋経済新報社から出版されています。投資銀行やPEファンドの現場で共有されている、Excelの作法を学べる本です。セルの色分け、数式の組み方、表の見せ方、ショートカットを使った操作など、実務では当たり前とされながら本には書かれにくい内容がまとまっています。
財務モデルを組む前にこの作法を身につけておくと、あとから修正する手間が大きく減ります。会計の専門書ではないため、ファイナンス理論を学ぶ本ではありませんが、日本の実務環境でそのまま使える基本が多く、読んだ翌日から業務の資料作成に活用できる点が特徴です。
- 対象読者:Excelの作法を体系的に知らない社会人
- 前提知識:Excelの基本操作
- 学べること:色分け、数式の組み方、ショートカット、表の見せ方
- 演習の有無:自分で再現しながら読む形式
- 補う内容:三表連動の構築手順、会計知識
Excel財務モデリングの教科書Ⅰ|ミスを減らすシート設計のルールを学ぶ

服部浩弥氏の著書で、税務経理協会から出版されている「ファイナンスのプロになる Excel財務モデリングの教科書」シリーズの1冊目です。副題に「ミスを減らすルール編」とある通り、入力・計算・出力を分けるシート設計、複雑な数式を避ける、数式内に数値を直接入力しない、使う関数を絞るといった、モデルの型を身につけるための本です。
会計の基礎がある人が、構築に入る前にルールを整理する用途に向いています。計算の正しさだけでなく、第三者が見て追えるモデルを作る視点が得られるため、実務で他人のモデルを引き継ぐ場面でも役立ちます。
- 対象読者:会計の基礎があり、モデルの型を知りたい人
- 前提知識:財務三表の基本、Excelの基本操作
- 学べること:シート設計のルール、ミスが起こる構造
- 演習の有無:構築演習は少なめ
- 補う内容:三表モデルを実際に組む演習
Excel財務モデリングの教科書Ⅱ|財務三表モデルの構築演習に取り組む

同じ服部浩弥氏によるシリーズ2冊目で、2026年8月に税務経理協会から出版された実践編です。価格は3,960円で、架空の高級輸入車ディーラーを題材に、事業計画から財務三表モデルを組み上げていきます。Ⅰで学んだルールを使って実際に数式を入力し、限られた時間で必要最小限の構成を作る進め方を学べます。
サンプルのExcelファイルを無料でダウンロードでき、本の手順と自分のシートを照らし合わせながら進められるため、手を動かす段階で最も使う一冊になります。Ⅰがルール、Ⅱが構築という役割分担なので、読む順番はⅠからⅡが基本です。
- 対象読者:三表モデルを自分の手で組みたい人
- 前提知識:Ⅰの内容、財務三表の基本
- 学べること:事業計画から三表モデルを構築する手順
- 演習の有無:サンプルファイル付きの構築演習
- 補う内容:DCFやLBOなどの応用
事業計画の極意|事業の仮説を数値計画に落とし込む

木村義弘氏の著書で、中央経済社から2024年12月に出版されました。副題は「仮説と検証で描く成長ストーリー」で、価格は4,070円です。事業の戦略や構想を売上高やコストにどう反映させるかという、定性と定量の橋渡しに重点を置いた本です。売上の考え方、コストの組み立て、資金計画、貸借対照表とキャッシュフローの設計、PDCAによる運用まで扱っています。
経営企画やスタートアップで事業計画を作る人に向いており、数式が合っていても前提が妥当でなければ計画として意味がない、という視点を補えます。モデリング技術そのものより、前提設計を学ぶ本として使います。
- 対象読者:経営企画、スタートアップの経営・財務担当
- 前提知識:財務三表の基本
- 学べること:売上・コスト・資金計画の前提設計
- 演習の有無:Excel操作の演習は中心ではない
- 補う内容:三表モデルの構築手順
Investment Banking 投資銀行業務の実践ガイド|企業価値評価やLBOに学習を広げる

ジョシュア・ローゼンバウム氏とジョシュア・パール氏による著書で、日本語版はパンローリングから出版されています。類似企業比較、類似取引比較、DCF法、LBO分析、M&Aの売却プロセスまで、投資銀行業務で使う分析手法を順に解説しており、海外では実務家の定番テキストとして知られています。
三表モデルを組めるようになった人が、企業価値評価やLBOに学習を広げる段階で使う応用書です。分量が多く価格も高めなので、最初から通読する本ではなく、基礎を固めたあとに手元に置き、必要な章を参照する使い方が向いています。英語版も流通しているため、原著と併用する人もいます。
- 対象読者:FAS、投資銀行、PEファンド志望者
- 前提知識:三表モデルの構築、ファイナンスの基礎
- 学べること:企業価値評価の各手法、LBOモデルの考え方
- 演習の有無:設例に沿った計算例あり
- 補う内容:日本の会計・税務実務との差異
目的別に見る財務モデリング本の読む順番
会計未経験者|三表の理解からExcelでの構築へ進む
会計未経験者は、財務3表一体理解法で会計の土台を作り、外資系金融のExcel作成術で作法を学び、Excel財務モデリングの教科書Ⅱで構築に進む順番がおすすめです。各段階の到達目安は次の通りです。
- 1冊目:利益が出ているのに現金が減る理由を自分の言葉で説明できること
- 2冊目:入力セルと計算セルを色分けし、数式をコピーしても崩れない表を作れること
- 3冊目:本を見ながらでよいので三表が一致するモデルを完成させること
教科書Ⅰは、Ⅱを進める中でルールの意味が分からなくなったときに戻る辞書として使うと、無理なく学習を続けられます。
経理・会計経験者|モデル構築のルールから三表連動の演習へ進む
経理や会計の経験があり、Excelでの構築経験がない人は、Excel財務モデリングの教科書ⅠとⅡを中心に進めるのが効率的です。会計知識はすでにあるため、Ⅰでシート設計のルールを整理し、Ⅱで三表モデルの構築演習に入ります。この層が意識したいのは、知っている会計知識をモデルの構造に置き換える際の視点の違いです。
経理の実務は過去の取引を正確に記録する作業ですが、モデリングは将来の前提から数値を導く作業であり、仕訳ではなく前提と数式の関係で三表をつなぎます。作法を補いたい場合は、外資系金融のExcel作成術を並行して読むと表の見せ方まで整います。
経営企画・事業計画担当者|前提設計と数値モデルを並行して学ぶ
経営企画や事業計画の担当者は、事業計画の極意とExcel財務モデリングの教科書Ⅱを組み合わせ、事業の仮説と数値の整合を取りながら学ぶ順番が合っています。前者で売上やコストの前提をどう設計するかを学び、後者でその前提を三表モデルに落とし込む手順を身につけます。
社内説明では、計算結果よりも「なぜこの成長率なのか」「このコスト前提の根拠は何か」を問われる場面が多いため、前提の置き方を言葉で説明できる状態を目標にしてください。モデルの精度を上げることと、経営陣に説明できる前提を作ることは別の作業であると意識して学ぶと、実務で使える計画になります。
FAS・投資銀行・PEファンド志望者|三表モデルを土台にDCF・LBOへ進む
FAS、投資銀行、PEファンドを志望する人は、基礎書を早めに終え、Investment Bankingを参照しながら応用に進む順番になります。具体的には、教科書ⅠとⅡで三表モデルを1カ月程度で組めるようにし、その後にDCF法による企業価値評価、続いてLBOモデルへ進みます。
転職や配属前の目安としては、三表が連動する簡易モデルを白紙から自力で作成でき、DCFの計算構造を説明できる状態であれば、入社後の研修やOJTに入りやすくなります。LBOまで自力で組める必要はありませんが、レバレッジが投資リターンに与える影響を言葉で説明できると、面接でも学習の深さが伝わります。
本で学んだ内容をExcelで形にする3つのステップ
小さな架空企業を設定し、実績と予測を分ける
いきなり大きなモデルを作らず、売上と費用が数項目しかない架空企業から始めてください。たとえば、商品1種類を販売する会社で、売上高、売上原価、人件費、家賃、減価償却費程度に絞ります。シートの横軸は年度とし、実績2年分と予測3年分のように列を分け、実績と予測の境目が一目で分かるようにします。
売上成長率や原価率といった前提は、計算式の中に直接入力せず、前提シートの一箇所にまとめて参照させるのが基本の型です。この小さなモデルで型を体に入れておくと、項目が増えても同じ構造を繰り返すだけで済むようになります。
入力・計算・出力を分けて財務三表をつなぐ
次に、入力・計算・出力の3つの役割を分けたうえで、損益計算書から順に三表をつなぎます。まず前提から売上と費用を計算して損益計算書を作り、純利益を求めます。続いて、売掛金や在庫などの運転資本、設備投資と減価償却、借入と返済のスケジュールを計算シートで組みます。
これらを反映して貸借対照表を作り、純利益と運転資本の増減、設備投資、資金調達を集めてキャッシュフロー計算書を作成します。最後に、期末の現金残高を貸借対照表の現金に戻すと三表が連動します。本で学んだシート設計のルールは、まさにこの段階で使うものです。
前提を変えて結果を検証し、変化の理由を説明する
モデルが完成したら、前提を変えて結果がどう動くかを検証します。売上成長率を5%から10%に上げたとき、利益だけでなく運転資本が増えて現金が減ることや、設備投資を増やしたときに減価償却費と借入残高がどう変わるかを、数値ではなく言葉で説明できる状態を目標にしてください。
本の手順を模写して三表が一致しただけでは、構造を理解したとはいえません。前提と結果の因果を自分で説明できて初めて、実務で上司や投資家の質問に答えられる水準になります。この検証を何度も繰り返すことが、独学で最も学習効果の高い部分です。
独学でつまずきやすいポイントと確認方法
貸借対照表が一致しないときの確認手順
貸借対照表の資産合計と負債・純資産合計が合わないときは、やみくもに数式を見直すのではなく、順番を決めて確認します。確認の順番は次の通りです。
- 期首残高が前期の期末残高を正しく参照しているかを見る
- 利益剰余金の増減が純利益から配当を引いた額と一致しているかを確認する
- 現金以外の各項目の増減が、キャッシュフロー計算書の対応する項目と符号も含めて一致しているかを一つずつ照合する
- 期末現金がキャッシュフロー計算書の期末残高と同じかを確認する
どこから見ればよいかが分かるだけで、独学で費やす時間を大きく減らせます。
循環参照が発生したときの考え方
財務モデルで循環参照が起こる典型は、支払利息と現金残高の関係です。利息は借入残高や現金残高から計算され、その利息が利益を通じて現金残高を変えるため、計算が互いに依存します。まず、意図した循環なのか、単なる参照ミスなのかを区別してください。
参照ミスであれば、依存関係を紙に書き出し、どのセルがどのセルを参照しているかを整理すれば解消できます。意図した循環であれば、利息を期首残高から計算して循環を避ける方法と、Excelの反復計算を有効にする方法があります。初学者のうちは、まず期首残高で計算する方法を選ぶと、エラーの原因を追いやすくなります。
計算が合っていても前提が妥当とは限らない
数式が正しく三表が一致していても、前提が事業の実態と合っていなければ、モデルとしては意味を持ちません。たとえば、市場全体が年2%の成長なのに、売上成長率を毎年20%と置けば、計算は合っても説得力はありません。利益率や回収期間が同業他社の水準から大きく外れていないか、設備投資の規模が売上の伸びと整合しているかを確認する習慣をつけてください。
経営企画や投資の実務では、計算の正しさは前提条件であり、評価されるのは前提の妥当性です。本で学ぶ構築技術と並行して、業界や企業の分析から前提を組み立てる視点を持つことが、独学者が次に越えるべき壁です。
本だけでは補いにくい部分と次に取る手段
操作の流れを確認したいときは動画講座を併用する
本で型を理解したあと、実際の操作の順番や手さばきは動画のほうが分かりやすい部分です。ショートカットを使ったセルの移動、数式の一括コピー、シート間の参照の張り方などは、文章で読むより画面を見るほうが短時間で身につきます。Udemyなどのオンライン講座には、財務モデリングを扱うものが複数あり、セール時には数千円程度で受講できることもあります。
本と講座は役割が異なるため、どちらか一方に絞る必要はありません。本でルールと理論を整理し、講座で操作を確認し、再び本に戻って理解を深めるという往復が、独学で最も無駄の少ない進め方です。
テンプレートは数式と前提を理解してから使う
インターネット上や講座の特典として配布される財務モデルのテンプレートは、便利な反面、使い方を誤ると学習の妨げになります。完成版をそのまま使うと、前提を変えたときに数値がなぜ動いたのかを説明できず、構造が崩れても修正できません。
学習に活用するなら、テンプレートの数式を1つずつ追って、入力・計算・出力がどう分かれているかを読み解き、同じ構造を白紙のシートに自分で再現する使い方が効果的です。他人のモデルを読み解く作業は、実務で前任者のモデルを引き継ぐ場面の練習にもなります。テンプレートは答え合わせの教材として使い、提出物として流用しないことが大切です。
自分のモデルが正しいか確認できる機会をつくる
独学の最大の壁は、自分の作ったモデルが実務で通用する水準かどうかを確認できないことです。三表が一致していても、構造が分かりにくかったり、数式が複雑すぎたりすれば、実務では評価されません。第三者に見てもらう手段としては、オンライン講座の質問機能、職場の財務や経営企画の先輩、財務モデリングの学習コミュニティや勉強会などがあります。
可能であれば、自分のモデルを見せて、前提の置き方や数式の組み方について率直な指摘を受けてください。一度でも指摘を受けると、本を読むだけでは気づけなかった癖が分かり、その後の学習の方向が定まります。
財務モデリングのスキルをキャリアに活かすには
財務モデリングが評価される職種と求められる水準
財務モデリングが評価される職種と、求められる水準は次の通りです。
- FAS:財務デューデリジェンスや企業価値評価の業務で三表モデルとDCFが必須
- 投資銀行:M&Aや資金調達の提案で企業価値評価とLBOモデルまで求められる
- PEファンド:投資判断のためにLBOモデルと投資リターンの分析が中心
- 経営企画:中期経営計画や予算策定のために三表連動の事業計画モデルが求められる
- スタートアップの財務担当:資金調達に向けた事業計画と資金繰りのモデルが必要
志望先に応じて、どこまで到達すればよいかを先に決めると学習の計画が立てやすくなります。
財務モデリングに資格は必要か
結論として、日本国内で財務モデリングの能力を決定的に証明する資格はありません。海外にはCFIのFMVAのような認定資格があり、学習の目標として役立ちますが、転職市場で資格の有無が合否を分けることはまれです。実務では、資格より実際に組めるモデルが重視されます。
面接で「三表が連動するモデルを白紙から作れます」と伝え、必要に応じて自作のサンプルを示せるほうが、資格名を並べるより評価につながります。会計やファイナンスの基礎を示す目的であれば、簿記2級や証券アナリストなどの一般的な資格が補助的に役立ちますが、モデリング学習そのものは資格取得を目的にせず、作れるものを増やすことに集中してください。
独学で身につけたスキルを転職活動で伝える方法
独学で身につけた財務モデリングのスキルは、「どの本で何を学び、どのようなモデルを作れるようになったか」を具体的に説明できることが評価につながります。たとえば、「Excel財務モデリングの教科書Ⅱで三表モデルの構築を学び、自分で架空企業のモデルを作成し、売上成長率を変えたときの資金繰りへの影響を説明できる」といった形です。
面接では、三表のつながり、循環参照への対処、前提の置き方の根拠などが聞かれやすいため、自分のモデルを題材に答えられるよう準備してください。学習の過程で何につまずき、どう解決したかを話せると、実務での自走力を示すことにもなります。

財務モデリングの本に関するよくある質問
まとめ|目的に合う一冊を選び、Excelで作って検証するところまで進めよう
財務モデリングの本を選ぶときは、自分の前提知識、到達したい範囲、演習の有無、学習環境の4点を基準にしてください。会計未経験者は財務3表一体理解法から、会計経験者はExcel財務モデリングの教科書ⅠとⅡから、事業計画の担当者は事業計画の極意を組み合わせ、FASや投資銀行を目指す人はInvestment Bankingへ進むのが目安です。
ただし、本選びは出発点であり、ゴールは小さなモデルを自分で組み、前提を変えて結果を説明できる状態です。今日できる最初の行動として、自分のレベルに合う一冊を決め、Excelで架空企業の損益計算書を作るところから始めてみてください。

