FASとコンサルの違いとは?仕事内容・年収の考え方・転職難易度を解説

  • URLをコピーしました!

▼中途採用面接の質問回答例を無料配布中!

「FASとコンサルは何が違うのか」「FASコンサルへの転職は自分にも可能なのか」。調べ始めると、年収の高さと「やめとけ」という言葉が同時に出てきて、判断に迷う方は少なくありません。結論からお伝えすると、FASはコンサルティングという広い括りの中で、M&Aや事業再生といった財務領域に特化した専門サービスです。そして転職の成否を分けるのは、どのファームに入るかよりも、どの部門でどのような案件を担当するかという点にあります。

この記事では、FASの読み方や業務領域といった基本から、コンサルとの違い、年収の考え方、転職難易度、未経験から目指す場合の準備、そしてキャリアパスまでを順に整理します。

目次

FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)とは

FASの正式名称と読み方

FASは「Financial Advisory Service(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)」の略称で、読み方は「ファス」が一般的です。実務でも「ファス部門」「ファス系ファーム」といった言い方をします。「ファズ」と読まれることもありますが、業界で定着しているのは「ファス」だと考えて差し支えありません。

名称のとおり、財務(ファイナンシャル)に関する助言(アドバイザリー)を提供するサービスを指し、その担い手が独立系のFASファームや、コンサルティングファーム内のFAS部門です。まずは読み方と意味を押さえておきましょう。

FASが支援するのは企業の意思決定が動く局面

FASが関わるのは、企業にとって日常業務とは異なる、大きな意思決定が動く場面です。具体的には、M&Aによる買収や売却、グループ内の事業再編、業績が悪化した会社の事業再生、資本政策の見直しといった局面が中心になります。

こうした場面では、対象となる事業や企業の実態を数字で把握し、いくらの価値があるのか、どのようなリスクが潜んでいるのかを見極める作業が欠かせません。FASはその調査と評価を担い、クライアントである企業が判断を誤らないよう財務面から支援します。事業の将来を左右する案件に、数字を通じて関与する仕事だといえます。

FASもコンサルティングの一領域という位置づけ

「FASとコンサルはどちらが上か」という比較を見かけますが、両者は対立する概念ではありません。コンサルティングという広い括りの中で、財務やM&Aに特化した領域がFASだと捉えるのが実態に近い理解です。

実際、総合系のコンサルティングファームには戦略部門やIT部門と並んでFAS部門が置かれていますし、Big4系のグループでも同じ看板の下にコンサルティング事業とアドバイザリー事業が併存しています。つまりFASコンサルタントも、クライアントの課題解決を担うコンサルタントの一種です。この位置づけを最初に押さえておくと、この後の違いの整理がぐっと理解しやすくなります。

FASとコンサルの違いを4つの視点で整理

扱うテーマの違い|経営課題の広さと財務領域への深さ

一般的なコンサルティングファームは、経営戦略の立案、業務改革、組織人事、ITの導入まで、経営課題を幅広く扱います。一方でFASが扱うテーマは、M&A、事業再生、企業価値評価といった財務に関わる領域に絞られ、そのぶん一つの領域へ深く入り込みます。

たとえば「新規事業をどの市場で立ち上げるか」はコンサルの領域ですが、「その事業を買収する場合、いくらが妥当で、どこにリスクがあるか」はFASの領域です。広く扱うか、深く掘るかという違いであり、どちらが上位という関係ではなく、担う役割が違うという点は押さえておきたいところです。

関与するタイミングの違い|構想段階か案件が動き出す局面か

二つ目の違いは、案件のどの段階で登場するかです。コンサルは、何をすべきかがまだ定まっていない構想段階から関わり、方針そのものを一緒に描いていくケースが多くなります。

対してFASは、買収や売却、再編といった具体的な案件が動き出してから関与することが中心です。相手方が存在し、契約締結という期限が設定された状況で、限られた時間の中で調査と評価を進めます。この時間軸の違いは働き方にも表れます。コンサルはプロジェクト単位で数か月腰を据える形が多い一方、FASは案件の進行状況に業務量が左右されやすい傾向があります。

求められる知識・スキルの違い

コンサルタントに強く求められるのは、正解のない問いに対して仮説を立て、論点を整理して人を動かす力です。FASでも構造化の力は必要ですが、土台になるのは財務・会計の知識と、数字を正確に扱う姿勢です。

決算書を読み解き、数値の裏付けを一つずつ確認し、根拠を示して説明する。この積み重ねが成果物の信頼性を支えます。実際にFASの選考では、簿記や会計の基礎知識、財務モデルを扱った経験が問われる場面が少なくありません。発想の幅を武器にするか、数字の確からしさを武器にするかという違いだと考えると分かりやすいでしょう。

身につく専門性とキャリアの広がり方の違い

身につくスキルの性質も異なります。コンサルで培われるのは、業界や機能を横断して課題を整理し、解決策を描く汎用的な力です。担当領域が変わっても応用が利く反面、何の専門家なのかを一言で説明しにくい面もあります。

一方FASでは、財務デューデリジェンスや企業価値評価といった、名前のついた専門性が積み上がります。転職市場では「M&Aの実務経験がある人材」という分かりやすい評価につながりやすく、次のキャリアの選択肢を具体的に描きやすいという特徴があります。どちらの伸び方が自分に合うかは、目指す将来像によって変わります。

FASと混同されやすい隣接領域との違い

投資銀行(IBD)との違い

FASと業務が近く見えるのが、証券会社の投資銀行部門(IBD)です。IBDは株式や債券による資金調達を含め、ディールそのものを主導する立場にあり、案件の成立額に連動した報酬体系が採られる点も特徴です。

対してFASは、財務や会計の観点から助言と検証を担う立場で、デューデリジェンスや企業価値評価といった専門作業を通じてクライアントの意思決定を支えます。案件全体を仕切る役割と、専門領域から精度を担保する役割の違いだと整理できます。どちらも同じM&Aの現場に関わるものの、求められる強みと働き方には差があります。

M&A仲介会社との違い

M&A仲介会社は、売り手と買い手の双方の間に立ち、両者の合意形成を進めるビジネスモデルです。中小企業の事業承継案件を数多く扱い、相手先を探すところから関与する点に特色があります。

一方でFASのファイナンシャル・アドバイザリーは、売り手か買い手のどちらか一方の立場に立ち、その依頼主の利益を最大化するために交渉や条件調整を支援します。立場が明確に分かれているため、対象企業の評価や条件面の検証にも踏み込みます。同じM&Aという言葉でも、役割設計が異なる点を理解しておくと、志望先の検討がしやすくなります。

FASの主な業務領域

FA(ファイナンシャル・アドバイザリー)

FAは、M&A案件全体の進行を管理し、クライアントの窓口として交渉や条件調整までを担う役割です。案件の初期段階で買収候補や売却先の検討を支援し、基本合意から最終契約に至るまでのスケジュールを組み立て、関係する専門家との調整も行います。

相手方や弁護士、会計士など多くの関係者が関わるため、対応力と段取りの力が問われます。数字を扱う正確さに加えて、交渉の場で相手の意図を読み取り、落としどころを探る力が必要になる領域です。案件が成立した瞬間の達成感を最も感じやすい業務でもあり、M&Aの現場全体を見渡せる立場でもあります。

デューデリジェンス|財務DDを中心とした調査業務

デューデリジェンス(DD)は、買収の対象となる企業の実態を精査する調査業務です。FASの中核を占めるのが財務DDで、過去の業績が実力を反映したものか、簿外の債務や回収が難しい資産がないかを確認し、買収価格の交渉材料となる論点を洗い出します。

限られた期間で大量の資料を読み込み、経営陣へのインタビューを通じて疑問点を解消していきます。見落としが数億円規模の損失につながる可能性もあるため、細部まで検証する丁寧さが欠かせません。企業の実態を数字から読み解く力が最も鍛えられる業務領域であり、転職後にまず配属されることの多い領域でもあります。

バリュエーション・財務モデリング

バリュエーションは、対象となる企業や事業の価値を評価する業務です。DCF法や類似会社比較法などの手法を用い、将来の事業計画に前提条件を置いて財務モデルに落とし込み、企業価値の水準を算定します。前提の置き方によって結果が変わるため、なぜその数値を採用したのかを説明できることが重要になります。

この領域で身につくモデリングのスキルは、投資ファンドや事業会社の経営企画など、次のキャリアでも高く評価されやすいという特徴があります。M&Aだけでなく、減損の判定や組織再編の場面でも必要とされる汎用性の高い専門性です。

PMI・事業再生/リストラクチャリング

PMIは、M&Aの成立後に買収した企業を統合していく支援業務です。制度や業務プロセス、管理会計の仕組みを揃え、想定していた効果を実際の数字として実現させるところまで伴走します。

事業再生・リストラクチャリングは、業績が悪化した企業に対して資金繰りを可視化し、事業の選択と集中や金融機関との調整を含めた再建計画づくりを支援する領域です。いずれも実行フェーズに深く入り込むため、現場の関係者と向き合う時間が長くなります。分析だけで終わらず、成果が出るまで関わりたい人に向いた業務です。クライアントの現場に近い距離で働ける点も特徴だといえます。

参考:PMIを実施する | 中小企業庁

フォレンジック(不正調査)

フォレンジックは、会計不正や不祥事が疑われる場面で事実関係を調査する領域です。メールやデータの解析、関係者へのヒアリングを通じて何が起きたのかを明らかにし、再発防止の体制づくりまで支援します。

M&Aとは性質が異なり、コンプライアンスや訴訟対応と隣り合わせの緊張感がある業務です。求められるのは、予断を持たずに事実を積み上げる姿勢と、機密性への高い意識になります。M&A領域を志望して入社した人にとっては想定と異なる場合もありますが、企業のリスク管理を支える専門性として確立された分野であり、会計の知識を別の形で活かせる領域でもあります。

FAS業界の全体像|Big4系と独立系の違い

Big4系FASの特徴

Big4系のFASは、監査法人を母体とする大規模なグループに属し、数百名から千名規模の組織で運営されています。案件の数と種類が豊富で、大企業のクロスボーダー案件から中堅企業の事業承継まで幅広く経験できる点が特徴です。

研修制度やナレッジの蓄積が整っており、未経験に近い状態からでも段階的に業務を覚えやすい環境があります。一方で組織が大きいぶん、担当する工程が細分化され、案件の一部分を深く担当する形になりやすい面もあります。どの部門に所属するかによって経験の中身が変わる点は、あらかじめ理解しておきたいところです。

独立系・ブティック系ファームの特徴

独立系やブティック系のファームは、少数精鋭でM&Aや事業再生に特化した体制を取っていることが多く、一人ひとりの関与範囲が広くなる傾向があります。案件の初期段階から成立まで通しで関わりやすく、経営者と直接やり取りする機会も多くなります。

そのぶん、手取り足取り教えてもらえる環境とは限らず、自ら調べて動く自走力が求められます。特定の業界や再生領域に強みを持つファームもあり、専門性の方向性が明確な点も特徴です。組織の規模ではなく、どのような案件にどこまで関われるかという観点で比較することが大切になります。

ランキングや知名度だけで判断しない方がよい理由

FAS業界のランキングや序列を調べる方は多いのですが、社名単位の比較には限界があります。同じファームの中でも、DDを担当するのか、FAとして案件を仕切るのか、再生やフォレンジックに携わるのかで、数年後に身についているスキルは大きく変わるためです。

規模の大きさは案件数の多さを意味しますが、自分がその案件のどこを担当できるかまでは保証しません。知名度は転職時の分かりやすさにつながる一方、実際のキャリアを左右するのは配属される部門と担当業務です。比較の軸は、社名から部門へと一段掘り下げて考える必要があります。

FASコンサルの年収の考え方

役職ごとに報酬レンジが設定される仕組み

FASを含むコンサルティングファームの報酬は、アナリスト、シニアアナリスト、マネージャー、シニアマネージャー、パートナーといった役職ごとに、あらかじめレンジが設定されているのが一般的です。同じ役職であれば個人差は大きくなく、昇進すると次のレンジへ移るという仕組みになっています。

つまり年収を上げる主な手段は昇進であり、どの段階でどれだけの期間を要するかが重要になります。加えて、業績に連動する賞与が支給される仕組みを持つファームも多く、ファームや部門の状況によって変動する部分がある点も特徴で、水準は時期によっても動きます。

年功ではなく担える役割で処遇が変わる

評価の基準になるのは在籍年数ではなく、案件でどこまでの役割を担えたかです。若手であっても、DDの一部を任され、論点を自ら整理して報告できるようになれば評価につながります。逆に、年数を重ねても担える範囲が広がらなければ、処遇も横ばいのままです。

この仕組みのため、事業会社に比べて早い段階で水準が上がりやすい一方、相応の稼働と成果が求められます。高い報酬は、専門性と責任に対する対価として設計されていると理解しておくと、入社後のギャップが小さくなります。昇進の要件やそこまでの標準的な期間を、選考の段階で確認しておくと計画も立てやすくなります。

金額だけでなく「何が身につくか」で比べる視点

ファームを比較するとき、提示された金額だけで判断すると後悔しやすくなります。同じ水準であっても、その数年で得られる経験は環境によって大きく変わるためです。バリュエーションや財務モデリングを繰り返し担当できる環境と、資料作成や一部の工程に限られる環境とでは、次のキャリアで示せる実績に差が出ます。

年収は転職時点の評価ですが、身につく専門性は数年後の市場価値を決める要素です。目先の条件と、獲得できるスキルの両方をセットで比較する視点を持つと、判断を誤りにくくなります。面談では、担当できる業務の範囲まで踏み込んで確認しておきたいところです。

「FASはやめとけ」といわれる理由とその実態

案件の進行に忙しさが左右されやすい

「やめとけ」といわれる理由の一つが、業務量の波です。M&Aの案件では、相手方や関係者の都合で締切が決まるため、自分の裁量だけでスケジュールを調整しにくい場面があります。デューデリジェンスの期間中は資料の分析と報告書の作成が集中し、稼働が高くなりやすいのが実情です。

一方で、案件と案件の合間には比較的落ち着いた時期もあり、常に同じ負荷が続くわけではありません。繁閑の波があることを前提に、忙しい時期をどう乗り切るかを考えられるかどうかが、適性を分ける一つのポイントになります。近年は働き方の見直しを進めるファームも増えています。

数字の正確性に対する責任が重い

FASの成果物は、買収するかどうか、いくらで買うかという意思決定に直結します。財務DDの見落としや企業価値の算定ミスは、クライアントに大きな損失をもたらしかねません。そのため、数字の根拠を一つずつ確認し、第三者が見ても再現できる形で整理する丁寧さが求められます。

この責任の重さはプレッシャーになりますが、裏を返せば、精度への意識と検証の習慣が短期間で身につく環境でもあります。数字を扱うことへの慎重さを苦にしない人にとっては、力がつく環境だといえます。この検証の習慣は、次のキャリアに移ってからも評価される土台になります。

希望する業務にすぐ携われるとは限らない

入社後の不安として多く挙がるのが、配属やアサインの不確実性です。案件の割り当ては組織側の状況にも左右されるため、M&Aを志望して入社しても、当面は別の領域を担当するケースがあります。専門性を積み上げて次のキャリアにつなげたいと考えている人ほど、この点は見過ごせません。

ただし、これは事前の確認によってある程度は避けられます。選考の段階で配属先の部門や担当する業務の範囲を具体的に確認しておけば、入社後のギャップは小さくできます。確認できることは確認したうえで判断する姿勢が、結果として納得感につながります。この点は後段で詳しく取り上げます。

FASへの転職難易度と求められる要素

難易度が高いといわれる背景

FASへの転職が難しいといわれるのには、いくつかの構造的な理由があります。まず、財務・会計の専門知識とコンサルタントとしての思考力の両方が問われるため、評価の基準が二重になっている点です。

加えて、採用は部門単位で行われることが多く、募集人数が限られます。同じファームでも、DD部門は積極採用でも他部門は募集がないという状況が起こります。応募のタイミングによって難易度が変わる面もあるため、業界全体の難易度を一括りに捉えるより、志望する部門ごとに必要な要件を確認する方が現実的です。募集の状況は転職エージェントを通じて把握できます。

財務・会計の基礎知識と数字を扱う姿勢

選考でまず確認されるのが、財務諸表を読み解く力です。損益計算書と貸借対照表、キャッシュフロー計算書のつながりを理解し、数字の変化から事業の状況を説明できるレベルが一つの目安になります。簿記の学習内容がそのまま土台になるため、未経験から準備する場合の出発点としても分かりやすいでしょう。

また、知識と同じくらい重視されるのが、細部の整合性を確認する姿勢です。面接では、これまでの業務で数字の正確性をどう担保してきたかを問われる場面があり、具体的なエピソードで語れると評価につながります。日常業務での確認の工夫が、そのまま材料になります。

論点を構造化し相手に伝える力

FASの仕事は、調査した内容をそのまま並べるだけでは成立しません。数多くの発見事項の中から意思決定に影響するものを選び出し、優先順位をつけて伝える必要があります。クライアントの経営陣は限られた時間で判断を下すため、何が問題で、価格や契約条件にどう影響するのかを簡潔に示す力が求められます。

選考ではケース面接や過去のプロジェクト経験を通じて、この構造化の力が確認されます。前職で分析結果を上位者に説明した経験がある方は、その進め方を整理しておくと選考で活きてきます。結論から伝える練習を重ねておくと、面接でも力を発揮しやすくなります。

資格と英語力の位置づけ

公認会計士やUSCPAは、財務DDやバリュエーションを担う部門で有利に働きます。監査業務を通じて財務諸表を扱ってきた経験が、そのまま業務の土台になるためです。ただし必須ではなく、簿記2級程度の知識と実務経験の組み合わせで評価されるケースも多くあります。

英語力については、クロスボーダー案件を扱う部門では読み書きを中心に必要とされる一方、国内案件が中心の部門では必須とされないこともあります。志望する部門がどのような案件を扱っているかによって、準備すべき要素は変わってきます。資格の学習と並行して、実務経験を整理しておくことも大切です。

前職別|FASで活かせる経験と、入りやすい領域

監査法人・公認会計士出身の場合

監査法人出身の方は、財務諸表を読み込んできた経験がそのまま強みになります。財務DDでは、数字の裏付けを確認する監査の手法と近い作業が多く、入社直後から戦力になりやすいのが特徴です。

一方で、視点の切り替えは必要になります。監査が過去の数字の適正性を確認する仕事であるのに対し、FASは買い手の意思決定に役立つ情報を提供する仕事です。同じ数値を見ても、注目すべき論点が変わります。この違いを理解し、依頼主にとって何が重要かを考えられるかどうかが、選考でも入社後でも問われます。監査で培った検証の習慣は、そのまま強みとして伝えられます。

銀行・証券など金融機関出身の場合

金融機関出身の方は、与信審査で企業の財務内容を評価してきた経験や、法人営業で経営者と接してきた経験が評価されます。特にFAやアドバイザリーの領域では、案件を進める段取りの力や、関係者との調整力が直接活きてきます。証券会社でM&A関連の業務に携わっていた方であれば、そのまま接続できる部分が多いでしょう。

適応が必要になるのは、成果物の水準と作業の進め方です。組織の看板ではなく、自分が作成した分析そのものが評価される環境になる点を、あらかじめ理解しておくとギャップが小さくなります。数字に加えて、人と向き合う力が活きる領域です。

事業会社の経理・財務・経営企画出身の場合

事業会社で数字を作ってきた経験は、FASでも独自の強みになります。決算業務を担当していた方は、財務諸表がどのように作られ、どこに判断の余地があるかを実感として理解しています。この感覚は、対象企業の数字の背景を読み解くうえで役立ちます。

経営企画で事業計画の策定や投資の検討に関わった経験があれば、バリュエーションの前提を考える場面でも活きるでしょう。適応が求められるのは、案件ベースで動く働き方です。年間のサイクルで進む業務から、案件ごとに区切られる働き方への切り替えが必要になり、繁閑の波を前提に働けるかが一つの分かれ目になります。

財務領域が未経験の職種から目指す場合

財務領域の実務経験がない場合、ハードルは相応に高くなりますが、道が閉ざされているわけではありません。まずは簿記や会計の学習で基礎知識を示すことが出発点になります。

そのうえで、これまでの業務の中からFASの仕事につながる接点を見つけ、選考で語れる形に整理することが重要です。データを扱って課題を分析した経験、複数の関係者を巻き込んで案件を進めた経験などは、いずれも評価の対象になります。第二新卒に近い年次であれば、ポテンシャルを含めて判断されるケースもあり、早めの検討が選択肢を広げます。準備を重ねた分だけ、選考での説得力は増していきます。

入社後のミスマッチを減らすファーム・部門の選び方

社名ではなく配属される部門と業務範囲で見る

FASへの転職で最も重要なのは、どのファームに入るかよりも、どの部門で何を担当するかです。同じファームの中でも、財務DD、FA、事業再生、フォレンジックでは、日々の業務も身につく専門性も大きく異なります。

求人票にFASと書かれていても、実際の業務内容は部門によって別物だと考えた方が実態に合っています。応募の段階から、自分がどの領域の専門性を積み上げたいのかを明確にし、その部門の募集かどうかを確認しておくことが、入社後のミスマッチを減らす最も確実な方法です。求人情報の肩書きだけで判断せず、業務内容まで確認することをおすすめします。

アサインや異動の決まり方を選考中に確認する

配属の不確実性は、選考中の質問である程度は解消できます。確認しておきたいのは次のような点です。

  • 案件へのアサインは誰がどのように決めるのか
  • 入社直後に想定されている担当業務は何か
  • 部門間の異動はどの程度の頻度で発生するのか
  • 希望を伝える機会は定期的に設けられているのか

これらは、面接の逆質問やエージェント経由で確認できる情報です。回答が曖昧な場合は、その不確実性も含めて判断材料になります。入社前に確認する手間を惜しまないことが、結果として短期離職を防ぎ、キャリアの主導権を自分の側に残すことにつながります。

案件の規模とプロセスへの関与範囲を確認する

同じM&Aの案件でも、大型案件と中堅企業の案件では経験の質が変わります。大型案件は関わる関係者が多く、担当する工程が細かく分かれるため、一つの領域を深く経験しやすい傾向があります。

一方、中小規模の案件では、初期の検討から成立まで一連のプロセスに関与しやすく、案件全体の流れを掴みやすくなります。どちらが優れているということではなく、自分が数年後にどのような経験を語れる状態でいたいかによって選ぶべき環境は変わります。面談では、担当する案件の規模感まで確認しておくと判断しやすくなります。過去の案件の事例を具体的に聞くと、実像が掴みやすくなります。

3〜5年後に何が積み上がるかで比較する

転職先を比べるときは、入社時点の条件だけでなく、数年後に何を持ち出せるかという視点を持つことをおすすめします。財務モデルを自分で作り切った経験があるのか、クライアントと直接やり取りした経験があるのか、案件を主担当として回した実績があるのか。こうした具体的な経験が、次のキャリアで評価される材料になります。

目先の年収や知名度は比較しやすい指標ですが、数年後の選択肢を決めるのは経験の中身です。この視点で比較しておくと、入社後の判断にも一本の軸ができます。転職の目的を書き出してから比較を始めると、選択がぶれにくくなります。

FASのその先|キャリアパスの選択肢

ファーム内でマネージャー・パートナーを目指す

一つ目の道は、ファームに残って役割を広げていく選択です。マネージャーになるとチームの運営と品質管理が主な仕事になり、複数の案件を並行して見る立場に変わります。さらにパートナーを目指す段階では、クライアントとの関係構築や案件の獲得といった、事業を作る力が問われます。

分析の担い手から、組織と案件を動かす側への転換が求められる点が特徴です。専門性を軸にしながら経営に近い立場を目指したい方にとっては、腰を据えて取り組む価値のあるキャリアパスです。組織に残る道を選ぶ場合は、長く働ける環境かどうかもあわせて確認しておきたい点になります。

PEファンド・投資ファンドへ進む

FASからの転職先として関心が高いのが、PEファンドをはじめとする投資ファンドです。デューデリジェンスや企業価値評価で培った知見は、投資先の検討や投資後の価値向上支援に直結します。特に、財務モデルを自分で組み立てた経験や、事業の実態を数字から読み解いた経験は選考でも重視されます。

ただし、採用枠が限られる領域であり、誰もが進める道ではありません。助言する立場から、自ら投資判断の責任を負う立場への変化も伴います。目指す場合は、関連する案件経験を意識的に積むことが近道になります。どの案件に手を挙げるかが、そのまま準備につながります。

事業会社の経営企画・M&A部門やCFO職へ

事業会社側へ移る道も有力な選択肢です。経営企画やM&A部門であれば、買い手として案件を検討し、実行まで責任を持つ立場になります。助言する側から意思決定する側へ回ることで、一つの事業に腰を据えて関われる点に魅力を感じる方が多い領域です。

将来的にCFOを目指す場合も、M&Aと財務の実務経験は強い裏付けになります。働き方の面では、案件の波に左右されにくくなる一方、報酬の構造はファーム時代と異なります。何を優先するかを整理したうえで検討したい選択肢ですが、腰を据えて一つの事業に関わりたい方にとっては有力な進路の一つです。

経験した業務によって開ける選択肢が変わる

ここまで挙げた選択肢は、誰にでも等しく開かれているわけではありません。バリュエーションや財務モデリングを中心に経験してきた方は投資ファンドへの接続がしやすく、PMIや事業再生で実行支援に深く関わってきた方は、事業会社の経営企画や再生案件を扱うポジションで評価されやすい傾向があります。

つまり、どの部門でどのような案件を担当したかが、数年後の選択肢の幅を決めます。入口の段階で部門選びが重要になるのは、このためです。将来像から逆算して、積むべき経験を選んでいく姿勢が大切です。日々の案件でどのような役割を担うかが、将来の選択肢を形づくります。

FASと他のコンサルはどちらを選ぶべきか

FASが向いている人・コンサルが向いている人

FASが向いているのは、数字を軸に一つの専門性を深めたい方です。財務や会計への関心があり、細部まで検証する作業を苦にしない方、明確な専門領域を持つことに価値を感じる方に適しています。

一方、経営課題を幅広く扱い、業界や機能をまたいで活躍したい方には、戦略コンサルや総合コンサルの方が合うでしょう。正解のない問いに仮説を立てて向き合う面白さは、コンサルティングファームならではのものです。どちらを選んでも専門性は身につきますので、自分が没頭できる対象で判断するのが現実的です。業務内容を具体的に想像できる方を選ぶのも一つの方法です。

将来のゴールから逆算して選ぶ

判断に迷うときは、どちらが優れているかではなく、自分がどこにたどり着きたいかから逆算するのが有効です。投資ファンドやCFOを目指すのであれば、財務・M&Aの専門性が直接活きるFASが近道になります。

事業会社の経営全般に関わりたい、あるいは幅広い課題解決の経験を積みたいのであれば、コンサルティングファームの方が接続しやすいでしょう。転職は目的ではなく手段です。5年後、10年後にどのような仕事をしていたいかを言葉にしてみると、選ぶべき道はおのずと絞られてきます。迷う場合は、両方の選考を受けながら比較する方法もあります。

FASとコンサルに関するよくある質問と回答

FASの読み方は「ファス」ですか?

はい、実務では「ファス」と読まれるのが一般的です。Financial Advisory Serviceの頭文字を取った略称で、日本語ではファイナンシャル・アドバイザリー・サービスと表記されます。「ファズ」と読む方もいますが、業界内での会話や求人情報では「ファス」がほぼ定着しています。「ファス系ファーム」「ファス部門」といった使われ方もしますので、あわせて覚えておくとよいでしょう。

なお、同じ略称が別の業界で異なる意味を持つ場合もありますので、文脈から判断することが大切です。各社の採用ページでも「ファス」の表記が使われています。

未経験からFASへ転職することはできますか?

財務領域の実務経験がない場合でも、転職の可能性はあります。実際に、金融機関の法人営業や事業会社の経理から入社する方は少なくありません。評価されやすいのは、簿記や会計の基礎知識を身につけていること、数字を扱う業務での正確性を示せること、そして関係者を巻き込んで案件を進めた経験があることです。

ただし部門によって求める要件は異なりますので、志望する領域の要件を確認したうえで準備を進めることをおすすめします。年次が若いほど選択肢は広がる傾向がありますので、興味を持った段階で情報収集を始め、必要な知識の準備に取りかかることをおすすめします。

公認会計士の資格は必須ですか?

必須ではありませんが、財務デューデリジェンスやバリュエーションを担う部門では、公認会計士やUSCPAの資格が有利に働く場面が多くあります。財務諸表を扱う土台があると判断されるためです。

一方、FAや事業再生の領域では、金融機関での実務経験や事業会社での経営企画経験が評価されるケースもあり、資格の有無だけで合否が決まるわけではありません。資格を取ってから挑戦するか、実務経験を軸に応募するかは、志望する部門と現在の経歴を踏まえて判断するとよいでしょう。簿記の学習から基礎を固め、実務経験と組み合わせて示す方法もあります。

まとめ|FASとコンサルの違いを理解して経験の中身から選ぶ

FASは、コンサルティングという広い括りの中で、M&Aや事業再生といった財務領域に特化した専門サービスです。経営課題を幅広く扱うコンサルとは、扱うテーマ、関与するタイミング、求められるスキル、そして積み上がる専門性が異なります。どちらが上ということではなく、自分がどのような専門性を持ちたいかによって選ぶべき道が変わります。

そして、FASを検討するうえで最も重要なのは、社名やランキングではなく、どの部門でどのような案件を担当できるかという点です。同じファームでも、財務DD、FA、事業再生、フォレンジックでは、数年後に身についている経験がまったく異なります。まずは自分が積み上げたい専門性を言葉にし、選考の段階で配属先とアサインの決まり方を確認してみてください。その一手間が、入社後のミスマッチを防ぎ、次のキャリアの選択肢を広げることにつながります。

▼中途採用面接の質問回答例を無料配布中!

ハイクラス転職にハイディールパートナーズが選ばれる理由

「受かる魅せ方」のご提案

ハイディールパートナーズでは、求人企業の人事担当者だけでなく、経営層との関係強化に特に力を入れています。採用計画は、企業の中長期的な成長戦略を強く反映しますので、経営層との対話を通じてこうした求人会社の成長戦略への理解を深めることに注力しています。弊社から具体的な求人をご紹介させていただく際には、こうした企業の経営戦略に基づく採用背景についてもきちんとお伝えさせていただきます。

経営戦略や採用背景の理解を深めることで、求人票の必須要件の文章上からは見えてこない「本当に欲しい人物像」の解像度を高く理解することができます。我々は、企業の採用背景を踏まえ、求職者様の「受かる魅せ方」を追求することで、選考通過の確度を最大化するお手伝いをさせていただきます。

非公開求人・急募案件のご提案

ハイディールパートナーズでは、常に数百を超える非公開ポジションを保有しています。これが実現できているのは、弊社が求人会社の経営層との関係性が強いことに加え、「ハイディールパートナーズが紹介してくれる人材であれば確度の高い人材に違いない」といった求人会社との強い信頼関係が構築されているためです。

通常、非公開求人はごく限られたエージェントのみに情報が開示されているため、限られた応募数の中で有利に選考を進めることが可能です。

質の高いキャリアコンサルタント

ハイディールパートナーズでキャリアコンサルタントを務める人材は、自らがハイクラス人材としてキャリアを歩んできた人材です。特に採用は厳選して行っており、大量採用は決して実施しません。少数精鋭の組織体だからこそ実現できる、専門的知見を有するプロのキャリアコンサルタントのみを抱えてご支援しております。

また、弊社では求職者様と中長期的な関係性を構築することを最も重視しています。短期的な売上至上主義には傾倒せず、真に求職者様の目指すキャリアに合致する選択肢を、良い面も悪い面もお伝えしながらご提案させていただいております。

  • URLをコピーしました!
目次