【転職体験談】大手からAIスタートアップに転職した法人営業職の大きな決断

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Fさん(29歳・男性) は有名私立大学の法学部を卒業後、日系大手ITサービス会社に入社し、約6年間ほど法人営業として中堅・大手企業向けに業務システムやクラウドサービスの提案営業に従事されました。その後、AI領域で急成長を続けるスタートアップにIT法人営業として転職されました。

現在は裁量の大きい環境で、自らの手で営業の勝ちパターンを築きながら、会社の成長を牽引する一員としてご活躍されていらっしゃいます。今回は、スタートアップへ飛び込んだ理由や、転職活動のリアル、入社後に見えた景色について、Fさんに詳しくお話を伺いました。

インタビュー対象者
  • お名前:Fさん(男性) ※仮名
  • 年齢:29歳
  • 学歴:有名私立大学卒(法学部)
  • 職歴:日系大手ITサービス企業(法人営業)→AIスタートアップ(法人営業)
目次

大手IT企業での営業時代と、ふと感じた違和感

現職までのご経歴を教えていただけますか

地方の出身で、都内の私立大の法学部を卒業しました。「民間企業の営業職で働きたい」と思っていて、大手を中心に就職活動をしました。

ご縁があったのが、大手のITサービス企業です。名前を聞けば「ああ、あそこね」とわかるくらいの規模ですね。法人営業の部署で、中堅企業から大手企業向けに業務システムやクラウドのサービスを提案する営業職を6年ほどやっていました。

正直、しばらくは「いい会社に入れたな」と素直に思っていました。研修もしっかりしているし、給与もちゃんと上がる、福利厚生も手厚く、世間でいう「安定」とはこういうことなんだろうな、と感じていました。そのため入社数年は、転職なんて一度も考えませんでした。今振り返ると、あのころの自分はかなり保守的だったと思います。

大手企業での営業は、具体的にどんな仕事だったんですか

ざっくり言うと、決まったサービスを、決まったお客さんに、決まったやり方で売る仕事でした。担当は既存のお客さんが中心で、年間数億円規模の予算を任されていましたね。1件あたりの商談が大きいので、半年から1年かけて詰めることもよくありました。

ただ、大きな会社ならではの難しさもあって、自分一人で完結できることがほとんどないんですよ。技術はエンジニアの部署、契約は法務、見積もりは別チーム、のように社内の調整が非常に多かったです。お客さんと向き合う時間より、社内の根回しに使う時間のほうが長いんじゃないか、と感じる日もありました。「これは自分の力で売っているんだろうか」というモヤモヤを、だんだん抱えるようになっていったんです。

転職を考えはじめたきっかけや理由を教えてください

きっかけは、26〜27歳くらいのときですね。ちょうど世の中で生成AIの話題が盛り上がってきていて、商談でも「おたくはAIで何かできないの?」と聞かれることが増えていました。ただ、私の扱うサービスには最先端のものがほとんどなくて、毎回「持ち帰って確認します」としか言えない、そんなもどかしさがありました。お客さんの熱量に、自分の会社が追いついていないなと強く感じました。

それで個人的にAI関連のニュースや勉強会に首を突っ込むようになったんですけど、調べるほど「面白そうな会社ってこんなにあるんだ」と見えてきました。世の中がこれだけ動いているのに、自分はこのままで良いのかと不安を感じるようになりました。

決定的だったのは、同期がベンチャー企業に転職したことです。本人が「毎日大変だけど、自分で作っている感じがして楽しい」と言っていて、その言葉が完全に刺さってしまって。家に帰ってからも、ずっと頭から離れませんでした。あれが、実際に動き出した瞬間だったと思います。

「安定を捨てる」という決断と、転職活動のリアル

転職を決断するとき、不安はなかったですか

いやいや、不安だらけでしたよ。一番大きかったのは「安定を捨てる」ことへの怖さです。大手にいれば急に潰れることもまずないし、肩書きがあるのは本当に強いと思います。それを手放して規模の小さい会社に行くのは、冷静に考えるとかなり大きな決断ですよね。

しかも、慎重な性格なんです。決断するまで半年以上は悩みました。転職サイトに登録しては「やっぱり違うかな」と見ないようになり、またしばらくして確認して、というのを何度か繰り返していましたね。

最後に背中を押してくれたのは、「このまま40歳になった自分」を想像したことでした。今のままだと、安定はしているけれど、あまりワクワクはしていないんだろうな、と。挑戦するなら早いほうがいい。20代後半というのは、ある意味でラストチャンスに近いタイミングだったんです。

ご家族や周囲の方の反応はどうでしたか

正直、最初は微妙でした。特に親ですね。両親は「大手に入った息子」を誇りに思ってくれていたので、「今より規模の小さい会社に移る」と伝えたときは露骨に心配されました。

会社の上司は意外とあっさりで、「もったいないとは思うけど、お前が決めたなら応援する」と言ってくれて、本当にありがたかったです。先に転職していた例の同期にも相談に乗ってもらいました。

親の説得はしっかり時間をかけました。AIがこれからどれだけ伸びるか、その会社がどんな技術を持ち、どのくらいの規模まで成長しているのかを整理して、帰省したときに真面目に話したんです。最終的には納得してくれて、応援してくれるようになりました。

転職活動を進める中で苦労したのはどのような点ですか

一番苦労したのは「自分の経験をどう伝えるか」でした。大手の法人営業は分業が進んでいるので、職務経歴書を書こうとすると「自分一人で成し遂げたことって何だっけ」となってしまって。最初に書いた経歴書を読み返したとき、「これは誰でも書けるな」と愕然としました。

営業として求められているのは、「決まったものを売る力」ではなく「まだ売り方が固まっていないものを、自分で考えて売る力」と考えていました。面接でも「指示がない中で、自分から動いて成果を出した経験はありますか?」のような質問はよく聞かれました。最初はうまく語れなくて、何社か落ちましたね。正直、自信をなくしかけた時期もありました。過去の経験から「自分で工夫したこと」を掘り起こして言語化していく、この作業を乗り越えたら、面接の通過率はぐっと上がりました。

準備期間はどれくらいで、どんな勉強をしましたか

本格的に動き出してから内定まで、トータルで4〜5ヶ月くらいですね。働きながらだったので、平日の夜と土日でコツコツ進めました。

やったことは大きく3つあります。1つ目は業界の理解です。AIやSaaSの構造や業界仕組みを、本やネット記事にて勉強しました。2つ目は営業手法の勉強で、スタートアップでよく使われる「ザ・モデル」という、営業プロセスを分業して効率化する考え方の本を読みました。3つ目が自己分析で、これが一番時間がかかりました。「あなたは何ができる人なのか」という問いには、自分の中に答えがないと語れないのでノートにこれまでの仕事を書き出して、ひたすら自問自答していました。あの作業があったから今があると思っています。

転職エージェントの活用と、会社を選んだ決め手

エージェントからはどのような支援を受けましたか

本当にお世話になりました。一人で活動していたら、途中で心が折れていたと思います。

最初は大手エージェントに登録したんですけど、途中から専門系特化のエージェントに切り替えました。これが正解でしたね。大手は求人数こそ多いんですけど、私が行きたかった領域の内部事情までは詳しくなかったんです。専門系特化の方は、会社の経営陣がどんな人で、どんなカルチャーで、今どんな課題を抱えているかまで教えてくれました。「Fさんの慎重なところは、組織がある程度形になっていて、技術もしっかりしている会社のほうが合うと思います」と、性格まで見て提案してくれたのは助かりました。

職務経歴書の添削もしてくれて、面接後は企業側のフィードバックもこまめに共有してくれました。一人では絶対に得られない情報なので、大手から別業界に飛び込む人は、その分野に詳しいエージェントを頼るのは有効だと思います。

面接ではどんなことを聞かれましたか

大手の面接とはまったく違って、最初はかなり面食らいました。大手は型が決まっているんですけど、スタートアップは結構会話に近いものでした。役員クラスの方が直接出てきて、「うちに来て具体的に何をやりたいの」「3年後どうなっていたい」と、本気度を試すような質問が多かったです。緊張感は、正直こっちのほうがずっと上でした。

一番印象に残っているのは、「うちはまだ売り方が固まっていないけど、Fさんならどう売っていきますか」と聞かれたことです。正解がない問いなんですよね。事前に対策できないので、その場で必死に考えて自分なりの仮説を話しました。たぶん「わからないなりに自分の頭で考えられるか」を見られていたんだと思います。

大手とベンチャー、最後まで迷いはなかったですか

正直迷いはありました。実はそのとき、別の大手企業からも内定をもらっていたんです。ネームバリューもあって、普通に考えればそちらが「正解」だったと思います。家族も当然そっちにしろという雰囲気でしたし。

決め手は、もう感情の部分でした。大手のオファーを見たとき、「ここに行ったら、3年後の自分がだいたい想像できてしまうな」と思いましたが、逆にスタートアップは、3年後どうなっているか全然読めない、その「読めなさ」のほうに、自分はワクワクしているんだな、と気付きました。もちろん怖さと表裏一体で、最後はギリギリまで悩みました。ただ、最終面接で会った経営陣や現場の人たちと話したとき、「この人たちと働いたら面白そうだ」と素直に思えたんです。条件で選ぶか、人と未来で選ぶかで私は後者を取りました。

今の会社を選んだ決め手はなんでしたか

「未知数なワクワク」と「人」も大きいんですけど、もう一つ現実的な理由もあります。技術的な裏付けがしっかりしている会社だったことです。

一口にAIベンチャーと言ってもピンキリで色々な会社がありました。でも私が選んだのは、しっかりした技術を土台に持っていて、組織としてもある程度かたちが整っている会社でした。慎重な私としては、「営業として自信を持って勧められるか」は譲れないポイントだったんです。「これは本当にお客さんの役に立つ」と心から思えるサービスだったので、安心して飛び込めました。加えて、まだ何もかも完成しているわけではないので、会社が大きくなる過程にど真ん中で関われる、それは大手では味わえないと思って、「ここだ」と決めました。

入社後に見えた景色と、リアルなギャップ

年収など、待遇面の変化はどうでしたか

ここはよく聞かれるんですけど、年収はほぼ維持でした。大手のときと、ほとんど変わっていません。

スタートアップというと「年収が下がる」イメージがあると思うんですけど、私の場合は転職市場での評価と、会社が本気で人を採りにきていたタイミングが重なって、現状維持の条件で入れたんです。年収を下げてまで挑戦する覚悟はしていたので、維持できたのは素直にありがたかったですね。

しかも面白いのが、入社して1年ちょっと経った今は、すでに当時の年収を上回っています。スタートアップは、成果を出せば昇給のスピードが速いんですよ。年功序列ではないので、若くても評価されればきちんと上がる。短期で見るか長期で見るかで、評価がまったく変わる世界だなと感じています。

今の会社に入ってよかったことを教えてください

一番は、「自分でやっている」という手応えが格段に増えたことですね。大手時代は商談一つ進めるのにも社内調整がたくさん必要でしたけど、今はお客さんへの提案を、かなりの部分を自分の裁量で動かせます。「こうしたら売れるんじゃないか」と思ったらすぐ試せて、決裁のスピードが段違いです。朝思いついたことが夕方には動き出していたりしていて、これは本当に気持ちいいです。

あと、いろいろなものとの距離が近いです。エンジニアとも日常的に話すし、経営陣との距離も大手とは比べものにならない。お客さんからの要望をその日のうちに開発チームに伝えて、製品に反映されることもあります。数字でも、私が入ってから担当エリアの契約数が前年の倍近くに増えました。「自分が増やした」と胸を張って言えるこの手応えは、何物にも代えがたいですね。

逆に、苦労していることはありますか

ありますよ、たくさん。意外かもしれませんが、社内の仕組みそのものは思っていたより整っていました。設立から年数も経っていて社員もそれなりにいるので、勤怠管理や経費精算といった事務的なインフラはちゃんとしていました。「何もかも手作業でカオス」と身構えていたぶん、拍子抜けするくらいでした。

しんどいのはそこじゃなくて、「営業のやり方」みたいな勝ちパターンがまだ固まりきっていない部分は、自分たちで作るしかないんですよ。マニュアル通りにやる世界ではない。最初の数ヶ月は何を正解とすればいいかわからず、わりと途方に暮れました。一人で受け持つ範囲も広くて、状況によっては隣接した業務にも手を出す必要がある。会社の業績が自分たちの動き次第でダイレクトに変わるので、いいプレッシャーでもあり、しんどいプレッシャーでもある。ただ、こういう「答えのない状況を自分で整理していく」こと自体が、振り返ればものすごい成長機会だなとも思うんです。

働き方は、大手時代と比べてどう変わりましたか

意外かもしれませんが、労働時間そのものはそれほど変わっていないんですよ。「ベンチャー=深夜まで激務」と身構えていたんですけど、そこまで極端ではなかったです。むしろ無駄な会議や社内向けの資料作りがほとんど無い分、純粋に仕事に集中できる時間は増えました。リモートワークも柔軟で、その点は前の会社より自由になった感覚です。

変わったのは、時間の「長さ」ではなく「密度」と「自由度」ですね。今はやることのほとんどが会社の成長に直結している感じがします。ただし、ON/OFFの切り替えは自分でしっかりやらないと危ないと感じます。自由な分、放っておくとずっと仕事のことを考えてしまいますね。意識して休む工夫はするようになりました。もしかしたら大手から来た人がつまずきやすいポイントかもしれません。

これから転職を考える人へ

今後のキャリア展望を教えてください

今は、目の前の仕事で会社を一緒に大きくしていくことに集中したいですね。この会社が次のステージに進む瞬間を、現場のど真ん中で見届けたいんです。

もう少し先で言うと、いずれは営業のチームをまとめる立場になりたいです。今は一人のプレイヤーですけど、会社が大きくなればメンバーも増える。私が今まさに苦労して作っている「売り方」を、後から入る人たちに伝えて仕組みにしていく、そういう役割を担えたら面白いなと。さらに長い目で見ると、正直まだ決まっていないんですよ。でも、それでいい。大手のころは「課長、部長」というレールが見えていたんですけど、今は自分でキャリアを作っていく感覚なんです。先が読めないからこそ気が抜けないし、その緊張感も含めて面白いなと思っています。

同じように、大手からベンチャーを考えている人にアドバイスはありますか

私みたいに「安定を捨てるのが怖い」という人は多いと思うんです。その気持ちは痛いほどわかります。だからこそ言いたいんですけど、「いきなり全部を捨てる必要はない」ということですね。

私がやってよかったのは、転職活動の前にまず情報を集めまくったことです。勉強会に行ってみるとか、先に転職した知り合いに話を聞くとか。会社を辞めずに片足だけ業界に突っ込んでみる。「やっぱり面白そうだ」と思えたら本気で動けばいいし、違うと思えば無理に転職しなくていい。リスクを一気に取るのではなく、小さく試すのが大事だと思います。もう一つは、「自分の市場価値」を一度きちんと確認してみること。エージェントに登録して話を聞くだけでもいい。動いてみると「自分の経験は、こういう会社に求められているんだ」という発見がある。怖いのは最初の一歩だけで、踏み出してしまえば意外と前に進めるものですよ。

もし転職前の自分に一言アドバイスするなら、何と言いますか

「そんなに長く悩まなくて大丈夫だよ」と言ってあげたいですね。私は決断まで半年以上も悩んで、登録しては退会して、を繰り返したので。慎重に考えるのは大事ですけど、頭の中だけで悩んでいても答えは出ないんですよね。結局、実際に動いて人に会って初めて、自分の本当の気持ちが見えてきた。「悩んでいる暇があったら、まず一歩動け」と伝えたいです。

あとは、「大手で培ったものは、ちゃんと武器になるよ」という点ですね。転職活動中は「自分には大した強みがない」と落ち込んでいたんですけど、入ってみたら大手で鍛えた基礎的なビジネスマナーやお客さんと丁寧に関係を築く力がすごく役に立っているんです。

何か挑戦するのに、完璧な準備が整うことなんてないんですよね。怖いのは当たり前なので、その怖さも全部抱えたまま一歩踏み出せた当時の私を褒めてあげたいです。

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