コンサル職種の選び方｜戦略・IT・FASなど職種別の仕事内容を解説

「コンサルに転職したいけど、職種が多すぎて違いがわからない」そんな悩みを抱えていませんか？戦略コンサル、ITコンサル、総合コンサル…名前は聞くものの、実際の仕事内容や激務度、将来性の違いは曖昧なまま。実は、コンサル業界には様々な職種があり、それぞれ求められるスキル、働き方、キャリアパスが大きく異なります。

本記事では、単なる職種分類の説明にとどまらず、あなたの適性と人生設計に合った「生存可能な」コンサル領域の選び方まで、現役コンサルタントの実体験を交えながら徹底解説します。未経験でも参入しやすい職種、ワークライフバランスが取りやすい領域など、転職成功のための実践的な情報をお届けします。

コンサルタントの基本定義と「営業」との決定的な違い

コンサルタントとは何か

コンサルタントとは企業の経営課題に対して、専門知識と客観的視点から解決策を提示し、実行まで伴走するプロフェッショナルです。

単なるアドバイスではなく、クライアント企業の変革をドライブする「チェンジエージェント」としての役割を担います。重要なのは、問題の本質を見抜き、実行可能な解決策を設計する能力です。

「提案営業」と「コンサル」の境界線

ソリューション営業も課題解決をテーマに業務推進を行いますが、コンサルとの違いは「商材の有無」です。営業は自社製品やサービスを前提に課題解決を図りますが、コンサルは解決策そのものが商品になります。

クライアントにとって最適解であれば、競合他社の製品でも推奨することもあります。自社の売上よりもクライアントの利益を重視して動くことが求められるため、「クライアントファースト」の働きをすることができます。

なぜ外部のコンサルタントが必要なのか

社内人材では見えない「組織の常識」という盲点があります。外部のコンサルタントは、業界横断的な知見と客観的視点で、社内政治に左右されない本質的な改革案を提示できます。

また、プロジェクト単位での専門家投入により、正社員採用よりも柔軟かつ効率的な問題解決が可能になります。

コンサル職種の全体像

機能別分類：上流から実行まで、多様な専門領域

コンサルティングファームは機能により多様に分類されます。ここでは、様々分類される職種別にご紹介いたします。

戦略系は経営の最上流（中期経営計画、新規事業戦略）を担い、総合系は戦略から実行支援、ITシステム導入などまで一気通貫で対応する特徴があります。IT系はテクノロジー活用による業務改革、専門系は財務、人事、マーケティングなど特定領域に特化しています。

戦略コンサルティング：経営の意思決定に直接関与

戦略コンサルティングは、CEOや経営陣と直接対話し、企業の将来を左右する意思決定を支援します。プロジェクトは短期集中型で、経営戦略立案、新規事業開発、M&A戦略などを扱います。

求められるのは極めて高い論理的思考力と、経営層を納得させるプレゼンテーション能力です。市場分析から競争戦略の立案まで、企業の根幹に関わる課題解決を担当します。

総合系コンサルティング：戦略立案から実行支援まで一気通貫

総合系コンサルティングは戦略立案だけでなく、システム導入、業務改革、組織再編まで幅広く対応します。プロジェクト期間は半年から数年と長期にわたることが多く、クライアント企業に深く入り込んで変革を推進します。

幅広い知識と、長期プロジェクトをマネジメントする忍耐力が求められます。業務プロセスの最適化から組織変革まで、企業の総合的な課題解決を実現します。

IT・デジタルコンサルティング：DX推進の最前線

IT・デジタルコンサルティングは企業のデジタル変革を技術面から支援し、要件定義からシステム実装、運用まで関与します。プログラミングスキルは必須ではありませんが、技術理解は不可欠です。

PMO（プロジェクト管理）業務やシステム導入における業務設計が主な仕事内容となります。基幹システムの刷新からAI・IoT活用まで、テクノロジーを活用した業務革新を推進します。

FAS（財務アドバイザリー）：M&Aと企業再生のプロフェッショナル

財務的な観点から企業の課題解決を支援する専門職です。M&Aアドバイザリー、バリュエーション、デューデリジェンス、事業再生支援などが主な業務です。

会計士や金融機関出身者が多く活躍する領域で、財務モデリングやバリュエーション技術など、明確な専門スキルが身につきます。企業価値評価から財務戦略の立案まで、財務面での高度な専門性を発揮します。

参考：デューデリジェンス（DD）とは？目的や手続き、種類を解説｜M&Aを学ぶ｜日本M&Aセンター

組織人事コンサルティング：人と組織の変革を支援

組織人事コンサルティングは人事制度設計、組織変革、タレントマネジメント、企業文化変革などを支援します。人事評価制度の再構築、組織再編に伴う人員配置最適化、リーダーシップ開発プログラムの設計など、企業の「人」に関わる課題全般を扱います。

心理学やHRMの知識が活きる領域です。働き方改革から組織風土改革まで、人材面での変革を実現します。

マーケティングコンサルティング：顧客価値創造の専門家

マーケティングコンサルティングはマーケティング戦略立案、ブランディング、CRM構築、デジタルマーケティング支援などを行います。市場調査から戦略立案、実行支援まで、顧客接点の改革を総合的にサポートします。

データ分析力とクリエイティブな発想力の両方が求められる領域です。消費者インサイトの発掘から新商品開発支援まで、マーケティング全般の課題解決を担当します。

業界特化型コンサルティング：深い業界知識で勝負

医療・ヘルスケア、製造業、金融、小売など、特定業界に特化したコンサルティングです。業界固有の規制や商慣習を熟知し、より実践的な提案が可能です。

元業界出身者が多く、実務経験を活かしたリアリティのある支援が強みとなります。業界特有の課題に対して、深い専門知識と実務経験に基づいた解決策を提供します。

コンサルタントアシスタント：コンサルティングの土台を支える重要な役職

コンサルタントアシスタントは、リサーチ業務、資料作成、データ分析、プロジェクト管理補助などを担当します。コンサルタントに求められる業務のサポート役として、プロジェクトの円滑な進行を支えます。

コンサル業界への入門職として位置づけられることも多く、業界理解を深めながらスキルを磨ける職種です。将来的にコンサルタントへのキャリアパスを描ける場合もあります。

職種別の働き方とキャリアの実態

戦略コンサルタントの働き方：知的体力の限界に挑戦

短期集中型のプロジェクトが中心で、クライアントの経営層と直接対峙します。膨大な情報を短期間で分析し、洞察を導き出す知的体力が必要です。

若手のうちはリサーチとスライド作成が主な業務ですが、早い段階から経営の中枢に触れる機会があります。成長スピードは速いものの、常に高いパフォーマンスが求められる環境です。

総合系コンサルタントの働き方：長期プロジェクトでの深い関与

数ヶ月から数年にわたるプロジェクトで、クライアント企業に深く入り込みます。戦略立案から実行支援まで幅広く関わるため、多様なスキルが身につきます。

チーム規模も大きく、プロジェクトマネジメント能力が重要になります。クライアントとの関係構築力も求められ、時にはクライアント企業に常駐することもあります。

ITコンサルタントの働き方：技術と業務の架け橋役

システム導入プロジェクトでは、業務要件の整理から技術仕様への落とし込みまでを担当します。IT部門と業務部門の間に立ち、双方の言語を理解して調整する役割です。

プロジェクトフェーズにより業務負荷が大きく変動し、要件定義や本番移行時は特に忙しくなります。技術トレンドへのキャッチアップも欠かせません。

FASコンサルタントの働き方：ディール案件との格闘

M&A案件では、限られた期間で企業価値評価やデューデリジェンスを完遂する必要があります。財務モデル作成やバリュエーション分析など、専門性の高い業務が中心です。

案件が少ない時期や自身でコントロールできる業務量内では比較的余裕がある働き方ができる特徴がありますが、案件が重なると極めて多忙になる波のある働き方です。

組織人事コンサルタントの働き方：人と向き合う専門職

組織人事コンサルタントは、人事制度設計や組織変革プロジェクトなど、多岐に渡るテーマを扱う特徴があります。人事制度設計では、経営層だけでなく従業員へのインタビューやワークショップも実施します。定量的な分析と定性的な洞察の両方が求められます。

組織変革プロジェクトでは、変革への抵抗を乗り越えるためのチェンジマネジメントも重要な役割です。人間心理への理解と共感力が不可欠です。

マーケティングコンサルタントの働き方：データとクリエイティビティの融合

市場調査データの分析から始まり、顧客インサイトの発見、戦略立案、施策設計まで一連のマーケティングプロセスを支援します。

デジタルマーケティング領域では、データ分析とクリエイティブ提案の両方が求められます。クライアントのマーケティング部門と密に連携し、実行可能性の高い提案が重要です。

コンサルタントアシスタントの働き方：縁の下の力持ち

プロジェクトの情報収集、資料作成、スケジュール管理など、多岐にわたるサポート業務を担当します。複数のプロジェクトを同時並行でサポートすることも多く、マルチタスク能力が求められます。

コンサルタントの働き方を間近で学べるため、将来のキャリアアップに向けた準備期間としても価値があります。

身につくスキルとキャリアパス｜成長機会

戦略コンサルタントが獲得するスキル

戦略コンサルタントは企業の経営そのものの戦略を考えていくことが求められます。そのため、課題設定力、論理的思考力、仮説構築力など、経営判断に必要な基礎スキルが徹底的に鍛えられます。また、経営層へのプレゼンテーション能力、複雑な問題を構造化する能力も身につきます。

キャリアパスとしては、投資ファンド、起業、事業会社の経営企画部門への転職など幅広い選択肢が考えられます。

総合系コンサルタントが獲得するスキル

総合系コンサルタントは幅広いこと経験を積めることが特徴です。主にプロジェクトマネジメント力、業務改革の方法論、システム導入の知見など、実行力を伴うスキルセットを獲得することができます。

大規模プロジェクトの推進経験は、事業会社でのDX推進やPMOポジションで高く評価されます。転職先は大手事業会社の改革推進部門など、実行を求められるポジションが多いです。

ITコンサルタントが獲得するスキル

ITコンサルタントでは、IT全般を網羅的に経験することができます。特に要件定義力、プロジェクト管理能力、IT戦略立案スキルを培うことができます。

技術と業務の両面を理解できる人材として市場価値は高いです。スタートアップのCTO、大手IT企業のコンサルティング部門、事業会社のIT企画部門などがキャリアパスとして開かれています。

FASコンサルタントが獲得するスキル

FASコンサルタントは、市場希少性の高いスキルを獲得することができる特徴があります。具体的には財務モデリング、企業価値評価、M&A実務知識など、ファイナンスの専門スキルが明確に身につきます。

財務知見を持つことで、主に金融業界でのキャリアパスが考えられます。例えば、PEファンド、投資銀行、事業会社のCFOポジションなど、ファイナンスプロフェッショナルとしてのキャリアが広がります。

組織・人事コンサルタントが獲得するスキル

組織・人事コンサルタントは、人事制度設計、組織診断、チェンジマネジメントなど、人と組織に関する専門知識が深まります。特に一定の業界に閉じることなく、幅広い業界知見を獲得できることも特徴です。

事業会社のCHRO、人事部門の管理職、独立して人事コンサルタントとして活動するなど、人事領域でのキャリアが中心となります。また組織の活性化、再編のようなコーチングポジションの選択肢も考えられます。

マーケティングコンサルタントが獲得するスキル

マーケティングコンサルタントは、市場分析、顧客インサイト発見、マーケティング戦略立案、デジタルマーケティングなど、マーケティング全般の実践的スキルが身につきます。

CMO候補、マーケティング部門責任者、独立してマーケティング支援を行うなど、マーケティング領域でのキャリアが広がります。マーケティングは戦略立案の起点となる考え方でもあるため、幅広い視点での活躍が期待されます。

あなたに合うコンサル職種の選び方

未経験の方が参入しやすい職種

コンサル業界未経験の方は、このような様々な専門性が求められる業界に参入できるか不安に感じたかもしれません。参入しやすい職種や、採用を積極的に行っている領域もございます。例えば、総合系の業務コンサルやIT系のPMO領域、組織人事コンサルティングは、事業会社での経験・知見をベースにコンサル業界未経験者も多く採用されています。

必要なのはコンサルタントになりたい熱意、論理的思考力、コミュニケーション力です。専門知識は入社後に習得可能です。コンサルタントアシスタントから始めて、徐々にコンサルタントへステップアップする道もあります。

ワークライフバランスを重視する人の選択肢

コンサル業界は激務と言われることもあるため、不安に感じる方も多いかもしれません。日系シンクタンクや中堅ファーム、組織人事系、マーケティング系は、比較的働き方改革が進んでいます。リモートワーク導入率も高く、フレックス制度を活用した柔軟な働き方も可能です。

プロジェクトの性質上、多忙期が急に発生しやすい戦略系やFASと比較すると、計画的な業務遂行がしやすい傾向があります。

キャリアの出口戦略から逆算する職種選択

中長期的なキャリアプランが明確な方は、そのゴール目標から逆算した職種選択を考えていくことが重要です。起業を目指すなら戦略系、大企業でのマネジメントなら総合系、専門性を極めたいならFASや組織人事系を選ぶことをおすすめします。

転職市場での評価や企業の規模だけでなく、自分が本当にやりたいことを経験ベースでしっかり実現できる職種を選ぶことが大切です。将来的なキャリアプランを考えていく場合は、信頼できる転職エージェントと相談しながら進めることも非常に重要です。

専門性を深めたい人の選択肢

今後の市場価値を高めていくためには、専門性を高めていきたいと考えている方も多くございます。専門性を深めたい人には、FAS、組織人事、マーケティング、業界特化型など、特定領域に特化した職種がおすすめです。

これらの職種では、明確な専門スキルが身につき、その道のエキスパートとして認知されやすくなります。独立や起業を視野に入れている場合も、専門性の高い職種の方が差別化しやすいです。

コンサル転職を成功させるために今からできること

ケース面接対策とスキルの棚卸し

コンサル業界の面接では論理的思考力を確認するために、ケース面接を出される場合が多いです。ケース面接では「フェルミ推定」と「ビジネスケース」の呼ばれるタイプのものが頻出しており、それぞれ対策が必要です。

市販の対策本での独学には限界があるため、転職エージェントの模擬面接活用が効果的です。現職での実績は「課題→アクション→成果」の構造で整理することが重要です。定量的な成果があれば強力な武器になります。日頃から論理的思考を意識し、実務での成果を言語化する習慣をつけることをおすすめします。

選考で評価されるポイントを理解する

コンサル業界の選考で評価されるポイントは、論理的思考力もですが、それ以上に「クライアントと対峙できるか」というコミュニケーション力が重要になります。

質問に対して結論から回答できるか、冗長にならずに端的に本質を述べることができるか、質問攻めされても冷静に対応できるか、曖昧な課題に対して仮説を立てて前に進める推進力があるかなどが評価されます。職種により求められる専門性も異なるため、志望職種に応じた準備が必要です。

転職エージェントの効果的な活用方法

コンサル業界を上手に進めていくためには、転職エージェントを活用することが大きなポイントとも言えます。大手エージェントはエージェント数や案件数は多いですが、人によってコンサル業界の内情理解は浅い可能性があります。

コンサル専門エージェントなら、各ファームの社風、プロジェクトの実態、面接官の傾向まで把握しています。特に重要なのは「なぜそのファームか」という志望動機の作り込みやその対策を一緒に伴走してくれるかという点です。表面的な理由では見透かされるため、深い企業研究が欠かせません。

よくある質問

まとめ：コンサルは「手段」であり「目的」ではない

職種選びの本質：あなたが本当に実現したいことは何か

高年収、スキルアップ、ステータス…コンサルに求めるものは人それぞれです。しかし忘れてはいけないのは、コンサルは「キャリアの通過点」であることです。

将来どうなりたいか、そのためにどの職種でどんな経験を積むべきか、この逆算思考こそが、後悔しない職種選択の鍵となります。各職種の特性を理解し、自分の適性と志向に合った選択をすることが、充実したコンサルタントライフの第一歩です。