コンサルは虚業か?叩かれる本当の理由と価値を生む側に立つための境界線

「コンサルは虚業だ」——ネット上でこうした批判を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。高額な報酬を受け取りながら、現場を知らず、失敗しても責任を取らない。そんなイメージがコンサルティング業界への不信感を生んでいます。
しかし、この批判には構造的な理由があり、同時に批判を超えて価値を提供するコンサルも存在します。本記事では、コンサルが虚業と言われる7つの理由を正面から分析し、虚業コンサルと本物のパートナーを見分ける具体的な基準、そしてAI時代に求められるコンサル像まで徹底解説します。依頼を検討している企業担当者、コンサル業界への転職を考えている方、現役コンサルタントの方、それぞれの立場で役立つ情報をお届けします。
「虚業」とは何か——コンサルが叩かれる言葉の正体
「虚業」という言葉は、コンサルティング業界への批判として頻繁に使われています。この批判の背景には、目に見える成果物を生み出す製造業などの「実業」と比較したとき、コンサルタントの仕事が何を生み出しているのか見えにくいという認識があります。
しかし、この批判を正しく理解するには、虚業という言葉の本質と、なぜコンサルが標的になりやすいのかを冷静に分析する必要があります。本章では、ネット上で渦巻くコンサル批判の実態と、その根底にある心理を解明していきます。
虚業の定義——「実体がない」ではなく「価値が伝わらない」状態
虚業とは本来、「実体のない商売」を意味する言葉ですが、現代においてはより広い意味で使われています。単にモノを作らない仕事を指すのではなく、支払った対価に見合う価値が明確に感じられない状態を批判する表現です。
コンサルティングが虚業と呼ばれる背景には、成果の可視化が難しいというビジネスモデル上の特性があります。戦略提案や業務改善の効果は、売上増加やコスト削減といった数値に現れるまでに時間がかかり、因果関係も複雑です。この「見えにくさ」が、価値への疑念を生む構造的な理由となっています。
なぜコンサルが標的になるのか——「高給×責任不在」への不信感
コンサルタントへの批判の根底には、報酬とリスク負担の非対称性があります。「なぜ現場を知らない外部の人間が高い単価で仕事をするのか」「提案が失敗しても彼らの給料は減らない」という不満は、事業会社で働く多くの人が抱える素朴な疑問です。
経験の浅い若手コンサルタントが、業界で何十年も働いてきたクライアント企業の社員に対して改善策を提示するという構図も、この不信感を増幅させています。この構造的な矛盾が解消されない限り、コンサルティングへの批判は続くことになります。

ネットで語られる「虚業コンサル」のイメージ
「お前がやれ」「口先だけ」「パワポ職人」——これらはネット上でコンサルタントを揶揄する際によく使われる表現です。掲示板やSNSでは、コンサルの話し方が「うざい」「マウントを取っている」といった批判も散見されます。
こうした声の背景には、現場で泥臭い業務をこなす実務者の疲弊感と、論理的正しさを武器に「正論」を押し付けてくる存在への反発があります。また、高学歴・高年収というイメージに対するルサンチマン(怨恨感情)も、批判を加速させる要因となっています。

コンサルが「虚業」と言われる7つの構造的理由
コンサルティングへの「虚業」批判は、単なる感情論ではありません。ビジネスモデルの構造自体が批判を招きやすい要素を内包しています。ここでは、なぜコンサルがそのように見られるのかを7つの観点から分析します。批判を正面から受け止め、その原因を理解することが、価値あるコンサルティングを実現するための第一歩です。
①提案と実行の分断——「言うだけで終わる」問題
コンサルティングファームの多くは、戦略策定フェーズと実行フェーズを明確に分けています。これにより、コンサルタントは「美しい資料を作って去る人」という印象を持たれがちです。現場の制約条件や、実行時に発生する予期せぬ課題を十分に考慮しないまま提案が行われるケースも少なくありません。
「理想論は聞いた、で、誰がやるの?」という現場の声は、まさにこの分断構造への不満を表しています。提案と実行が乖離すればするほど、コンサルの仕事は虚業と映ってしまいます。

②成果指標の曖昧さ——「何に対していくら払ったか」が見えない
コンサルティング費用は、多くの場合、時間単価や人月単価で算出されます。しかし、「何時間働いたか」ではなく「どんな成果を出したか」で価値を判断したいのがクライアントの本音です。
プロジェクト終了後に「結局、何が変わったのか」「高い費用に見合う効果があったのか」が不明確なままになるケースは少なくありません。この成果と対価の紐づけの曖昧さが、「お金を払ったのに具体的なリターンがわからない」という不満を蓄積させ、虚業批判の温床となっています。

③若手・新卒コンサルへの反発——「経験ゼロで何がわかる」
コンサルティング業界では、新卒や若手が早期から重要なプロジェクトに参画することが珍しくありません。しかし、業界経験ゼロの若者が、何十年もその分野で働いてきたクライアント企業の社員に対して改善提案を行う構図は、しばしば反発を招きます。
「現場のことを何も知らないのに、なぜ偉そうに指示されなければならないのか」という感情は、単価の高さと経験値の低さのギャップから生まれます。この矛盾が解消されない限り、批判は続くでしょう。
④現場理解の欠如——泥臭い制約条件への想像力不足
予算の制約、人員不足、社内政治、レガシーシステムの存在——現場には机上の分析では見えない無数の制約条件があります。コンサルタントが作成する資料は論理的には正しくても、これらの制約を考慮していないと「現実離れした理想論」と受け取られます。
データと分析に基づく提案が、現場の実態から乖離しているとき、それは価値を生まない「虚業」に見えてしまいます。課題解決の道筋は、理論だけでなく現実との折り合いの中で見つけるものです。
⑤コミュニケーション摩擦——「上から目線」「論理で詰める」への拒絶
コンサルタント特有のコミュニケーションスタイルが、感情的な反発を生むことがあります。論理的正しさを武器にした話し方や、フレームワークを多用した説明は、「マウントを取られている」「気持ち悪い」という印象を与えることがあります。
知識の非対称性を感じさせるコミュニケーションは、たとえ内容が正しくても受け入れられません。組織を動かすには論理だけでなく、感情面での共感も必要です。この点への配慮が欠けると、虚業という批判に繋がります。

⑥失敗事例の隠蔽——「成功事例だけ語る」生存者バイアス
コンサルティングプロジェクトの失敗率は70〜80%とも言われていますが、業界から語られるのは成功事例ばかりです。この生存者バイアスにより、クライアント企業は期待値を高く持ちすぎ、現実とのギャップに失望することになります。
失敗を語らない業界体質は、短期的には契約獲得に有利でも、長期的には信頼を損ないます。「うまくいった話しか聞かない」という不透明さが、虚業という批判を助長しているのです。
参考:Changing change management | McKinsey
⑦AIで代替可能に見える領域の拡大
ChatGPTをはじめとするAI技術の進化により、情報整理、市場調査、資料構造化といったコンサルタントの仕事の一部が代替可能になりつつあります。「それ、AIでできるのでは?」という疑問は、コンサルティングの付加価値への根本的な問いかけです。
情報の非対称性を利用して高単価を設定していた時代は終わりを迎え、AIにはできない「人間ならでは」の価値を証明しなければ、虚業という批判を払拭することは困難になっています。

それでもコンサルが必要とされる「人間にしかできない価値」
ここまでコンサルへの批判を検証してきましたが、それでもコンサルティングが必要とされる場面は確実に存在します。重要なのは、虚業になりやすい構造を理解した上で、AIには代替できない本質的な価値を提供することです。本章では、批判を超えてコンサルが「実業」として機能するために必要な要素を明らかにします。
意思決定の「背中を押す」——正解を出すのではなく、決断を支援する
経営者やプロジェクト責任者が本当に求めているのは、しばしば「正解」そのものではありません。複雑な状況下で決断を下す際に、論点を整理し、リスクを可視化し、「この選択で間違いない」という確信を与えてくれる存在が必要なのです。
コンサルタントの本質的な価値は、意思決定プロセスを設計し、決断の「背中を押す」ことにあります。顧客が必要としているのは、答えを与えてくれる存在ではなく、決める勇気を支えてくれるパートナーなのです。
社内政治の「調整役」——言いにくいことを言える外部の力
企業組織には、社内では言いづらい「不都合な真実」が存在します。部門間の利害対立、聖域化した非効率業務、変革を阻む既得権益——これらに切り込むには、外部の視点と立場が有効です。
コンサルタントは、社内のしがらみから自由な第三者として、正論を提言する機能を担います。この「外圧」としての役割は、組織変革を推進する上で不可欠です。言いにくいことを代わりに言ってくれる存在として、コンサルは価値を発揮します。
変革の「推進エンジン」——スピードと実行力を加速させる
大規模な事業変革やDXプロジェクトでは、社内リソースだけでは対応しきれないスピードと専門性が求められます。PMO機能の提供、専門知識の注入、推進体制の構築など、コンサルタントは変革の「加速装置」として機能します。
限られた期間で成果を出さなければならないプロジェクトにおいて、経験豊富なチームを即座に投入できることは大きな価値です。この推進力こそ、コンサルティングファームが必要とされる理由の一つです。
ナレッジの「型化」——組織に残る仕組みを作る
真に価値のあるコンサルティングとは、プロジェクト終了後も組織に残る「型」を作ることです。属人化していたノウハウを標準化し、再現性のある仕組みとして定着させることで、クライアント企業は自走できるようになります。
「コンサルがいなくなったら元に戻った」という事態を防ぐためには、スキルやナレッジの移転を意識した支援が欠かせません。組織の成長に貢献し、内製化を支援することこそ、虚業と呼ばれないための条件です。
「虚業コンサル」と「本物のパートナー」を見分ける5つの基準
コンサルティングを依頼する側にとって、「ハズレ」を引かないことは極めて重要です。ここでは、発注前・プロジェクト進行中に確認すべき具体的なチェックポイントを提示します。抽象的な基準ではなく、すぐに使える質問リストとして活用してください。
①「実行フェーズの想定」を具体的に語れるか
優れたコンサルタントは、提案段階から実行フェーズを見据えています。「このプランを実行する際、現場で起きそうな障壁は何ですか?」という質問を投げかけてみてください。具体的な想定と対策を語れるかどうかが、机上の空論で終わらない提案ができるかの判断材料になります。
「誰が、何を、いつまでに実行するのか」を明確に説明できないコンサルタントには、実行段階で苦労する可能性が高いと考えるべきです。
②失敗事例と、そこからの学びを語れるか
成功事例だけを並べるコンサルタントは危険信号です。「過去に最も苦労したプロジェクトと、その教訓を教えてください」と聞いてみましょう。失敗から何を学び、どう改善したかを正直に語れるかどうかが、信頼できるパートナーかの判断基準になります。
完璧を装うより、失敗を認め成長を示せる相手の方が、困難なプロジェクトを乗り越えられるパートナーとなる可能性が高いのです。
③成果指標(KPI)と検証方法が具体的か
「売上向上」「業務効率化」といった曖昧な目標ではなく、数値化された指標と検証方法を提示できるかを確認します。「このプロジェクトの成功を、何をもって判断しますか?」という質問への回答が具体的であるほど、成果へのコミットメントが本物である可能性が高まります。
成果指標が曖昧なままプロジェクトを開始すると、終了後に「結局何が変わったのか」が不明確になるリスクがあります。
④担当者の経験・稼働体制が透明か
提案時と実働時で担当者が変わる「おとり営業」には警戒が必要です。「実際にプロジェクトを担当する方の経歴を教えてください」と確認し、その人の経験値や稼働率を事前に把握しましょう。
シニアパートナーが提案に来ても、実際に手を動かすのは経験の浅い若手ばかりというケースは珍しくありません。誰がどの程度の時間をプロジェクトに費やすのか、透明性を求めることが重要です。
⑤料金の内訳と「何にいくら」が明確か
見積もりの総額だけでなく、工数・スコープ・追加費用発生条件の透明性を確認します。「この見積もりの内訳と、追加費用が発生する条件を教えてください」と質問し、曖昧な回答しか得られない場合は注意が必要です。
予算管理の観点からも、何にいくら払っているのかを明確にしておくことで、プロジェクト進行中の予期せぬ追加請求を防ぐことができます。
AI時代にコンサルはどう変わるべきか——「虚業」から脱却する道
生成AIの急速な進化は、コンサルティング業界に根本的な変革を迫っています。何がAIに代替され、何が人間にしかできないのか。これからのコンサルタントが目指すべき方向性を検討します。
AIに代替される領域——情報整理・資料作成・定型分析
これまでコンサルタントの「価値」の一部とされてきた情報の非対称性は、AI技術によって急速に崩壊しつつあります。市場調査、競合分析、データの構造化、資料のビジュアライズ——これらの業務はAIが高速かつ低コストで実行できるようになりました。
「パワポ職人」「リサーチャー」としての役割はコモディティ化し、それだけでは高単価を正当化できなくなっています。この変化を直視しなければ、虚業批判は一層強まるでしょう。
人間に残る領域——問いの設定・合意形成・覚悟の共有
AIが「正解」を出せる時代において、人間のコンサルタントに残る価値は何でしょうか。それは「正しい問いを立てる力」「組織の合意を形成する力」「クライアントと痛みを共有する覚悟」です。
AIは情報を処理できますが、経営者の不安に寄り添い、組織の感情を読み取り、変革の痛みを共に引き受けることはできません。この「人間だからこそ」の領域に価値を見出すことが、これからのコンサルタントに求められます。
これからのコンサル像——「実行伴走」と「透明性」がカギ
虚業と呼ばれないためのコンサル像は明確です。提案だけでなく実行に責任を持ち、成果指標を透明化し、クライアントと痛みを共有する——この「実行伴走型」のコンサルティングこそが、批判を乗り越える鍵となります。
ハンズオンで現場に入り込み、クライアントと同じ目線で課題に取り組む姿勢が求められます。「当事者性」を持ったコンサルタントだけが、AI時代を生き残り、真のパートナーとして選ばれる存在になれるのです。
【立場別ガイド】あなたが取るべき次のアクション
この記事を読んだ後、具体的にどう行動すべきかは、あなたの立場によって異なります。ここでは、読者の属性ごとに、すぐに実践できるアクションを整理します。
コンサルに疑問を感じている方へ——批判を「選球眼」に変える
「虚業」という感覚は、健全な警戒心の表れです。その感覚を否定するのではなく、「価値を出すコンサル」と「虚業で終わるコンサル」を見分ける選球眼として活かしましょう。
本記事で紹介した5つの基準を使い、発注前に徹底的に質問をぶつけてください。批判的な目を持ちつつも、本当に価値を提供できるパートナーを見極めることで、コンサルティングを賢く活用することが可能になります。
現役コンサル・志望者へ——「虚業」と言われないキャリアの作り方
批判を恐れるのではなく、正面から向き合うことが成長への第一歩です。実行フェーズにコミットし、現場に入り込み、成果を可視化する——これらを意識したキャリアを築きましょう。「スライドを作る人」から「変革を一緒に実現する人」へと転職してでも進化する覚悟が必要です。
AIに代替されないスキルとして、問いの設定力、合意形成力、そして当事者意識を磨くことが、長期的なキャリアの安定に繋がります。
コンサル導入を検討中の企業へ——失敗しない発注と進め方
コンサルティングを「虚業」にしてしまうのは、発注側にも責任があります。課題の棚卸しを徹底し、ゴール設計を明確にし、社内の推進体制を整えた上で発注しましょう。「丸投げ」ではなく、コンサルタントと協働で進める姿勢が成功の鍵です。
進捗管理を怠らず、定期的に成果を検証し、必要に応じて軌道修正を求める——こうした発注者としてのベストプラクティスを実践することで、投資対効果を最大化できます。
まとめ——コンサルは「虚業にも実業にもなりうる」
コンサルティングという仕事は、構造的に「虚業」と批判されやすい側面を持っています。提案と実行の分断、成果の不可視性、報酬とリスクの非対称性——これらは事実として認める必要があります。
しかし、当事者性、実行コミットメント、透明性を備えれば、組織変革に不可欠な「実業」として機能することも可能です。批判を真摯に受け止め、本質的価値を追求することが、業界全体の信頼回復に繋がります。
虚業を脱するための3つのキーワード
コンサルティングが虚業から脱却するために必要な要素は、「透明性」「当事者性」「実行力」の3つに集約されます。成果指標と費用の透明性を担保し、クライアントと同じ目線で課題に向き合う当事者性を持ち、提案だけでなく実行まで責任を果たす実行力を備えること。
この3つを兼ね備えたコンサルタントだけが、批判を乗り越え、真に必要とされる存在になることができます。
最後に——「価値が伝わる仕事」をするために
虚業と実業を分けるのは、業種や業界ではなく「姿勢」です。自らの仕事が生み出す価値を言語化し、クライアントに伝え、成果として証明する努力を続けることが、すべてのプロフェッショナルに求められています。
コンサルタントに限らず、自分の仕事が「虚業ではない」と胸を張って言えるかどうかは、日々の姿勢と行動によって決まります。価値が正しく伝わる仕事を続けることこそが、最大の防衛策なのです。


