【転職体験談】製造業からコンサルへ ― 28歳で挑戦した異業種転職の軌跡

- お名前:Tさん(男性) ※仮名
- 年齢:28歳
- 学歴:地方国公立大学卒(工学部)
- 職歴:日系総合電機メーカー(生産管理)→日系総合コンサル(コンサルタント)
地方国立大学の理系出身で、日系電機メーカーで生産管理職として働いていたTさん(仮名・28歳)。
安定した環境から一転、コンサルティング業界への転職を決意し、見事に日系総合コンサルティングファームへの転職を成功させました。製造業の現場で培った経験を武器に、新たなキャリアを切り開いたTさんに、転職活動の実情と現在の仕事について詳しく伺いました。
これまでのご経歴について
現職までのご経歴を教えていただけますか
地方国立大学の工学部で機械工学を専攻し、新卒で日系の大手総合電機メーカーに入社しました。配属は生産管理部門で、主に家電製品の生産計画立案や在庫管理、サプライチェーンの最適化などを担当していました。
入社して最初の2年間は工場の現場で勤務しまして、その後は本社の生産企画部門で、複数の工場を横断的に見る仕事をしました。データ分析を活用した生産効率化に向けた改善提案などにも携わり、年間数億円規模のコスト削減プロジェクトにもメンバーとして参画しました。約6年間勤務し、現在の日系総合コンサルティングファームに転職しています。
新卒で総合電機メーカーを選んだ理由は何だったのでしょうか
学生時代からものづくりには興味があり、日本の製造業を支える仕事がしたいと思ってました。特に品質管理だったり生産効率化みたいな、日本企業が世界に誇る製造業の強みを活かす領域に携わりたいと思って新卒では選びました。
大学での研究内容を実務で活かせそうな生産管理職に魅力を感じたというのもあります。当時はバリバリこの会社で定年まで働くつもりでしたし、製造業のプロとしてキャリアを積んでいこうといったビジョンもありました。
前職での具体的な成果についてもう少し詳しく教えていただけますか
特に印象に残っているのは、入社4年目に担当した在庫最適化プロジェクトで、複数の製品ラインで過剰在庫が慢性化しているという課題に対して、需要予測モデルの改善と発注ロジックの見直し提案を行いました。
Pythonを使って過去3年分の販売データを分析し、季節変動や製品ライフサイクルを考慮した予測モデルを構築しました。結果、在庫回転率を改善し、年間で数億円のキャッシュフロー改善を実現でき、この成果は社内でも高く評価されて表彰もいただきました。
これは自分の中でも結構な成功体験となっていて、データ分析と現場知識を組み合わせた問題解決の面白さを実感しました。
転職を考え始めたきっかけ
転職を考えはじめたきっかけや理由を教えてください
きっかけは、入社5年目に参加した他社との合同プロジェクトでして、外部のコンサルタントの方々と一緒に仕事をする機会があり、コンサルティング会社の課題解決アプローチや思考の深さにびっくりした記憶があります。
彼らを見ていて、自社の枠を超えて様々な業界の企業の経営課題に取り組める仕事の幅広さにも魅力を感じましたし、業界全体が成熟期に入る中で、自分のスキルをより多様な場面で活かしたい、様々な企業の変革に貢献したいというような考えも持つようになりました。コンサルだったら、製造業で培った専門性を、より広いフィールドで発揮できるかもといった可能性も感じました。
具体的には現職でどのような課題意識をお持ちでしたか
大きく3つあります。1つ目は、意思決定のプロセスで、前職には大企業特有の承認フローがあり、新しいことを実現するまでにかなり時間がかかることも多かったです。鶴の一声でプロジェクトが消し飛ぶ経験もしました。2つ目は、専門性の深さと広さのバランスです。生産管理としての知識は身についた一方で、経営全体を俯瞰してみれる視点も身につけたいと思うようになりました。
3つ目は、成長機会の多様性で、製造業の枠内での成長も魅力的でしたが、異なる業界の課題に触れることで、より多角的な視点を身につけたいと考えました。これは前職への不満というより、自分の今後のキャリアの可能性をもっと広げたいという前向きな動機だったと思います。
周囲の反応はどうでしたか?転職について相談された方はいますか
両親は最初心配していましたが、私の熱意を理解してくれていて、自分の可能性に挑戦することは大切と最終的には応援してくれていました。
退職交渉の中で、直属の上司も最終的には応援してくれました。向上心のある人材はどこでも活躍できるよ、と背中を押してくれたのは素直に嬉しかったですし、今でも交流があります。
特に家族が「成長環境を選ぶべき」と全面的にサポートしてくれたのは、ハードな転職活動を進めていく中では精神的に大きかったです。
転職活動の実際 ― 準備から内定まで
転職活動を進める中で苦労したのはどのような点ですか
一番苦労したのはケース面接対策だったと思います。コンサルティングファーム特有の選考方法で、製造業では経験のないものだったので、最初は戸惑いましたが、これも新しいスキルを身につける良い機会だと思って前向きに取り組めました。
自分の経験をコンサルティング業界でどう活かせるか、といったストーリー作りも苦労しました。「なぜ製造業からコンサルなのか」という問いに対して、きちんと答えていく必要があったので、この過程は自己理解を深める貴重な機会になったと思います。前職も結構忙しい中での時間管理は大変だったんですが、目標が明確だったので、モチベーションを保ちながら準備を進められました。
実際の面接で印象に残っている質問はありますか
あるファームの最終面接で、「あなたが今まで解決できなかった問題は何か、そこから何を学んだか」と聞かれたのは印象的でした。
このときは部門間の利害調整に苦戦したプロジェクトの話をしました。技術的には正しい解決策でも、関係者全員の納得を得ることの重要性を学んだという経験をお話したところ、面接官から「コンサルタントとしてその経験をどう活かすか」と聞かれ、「単に論理的に正しい解を示すだけでなくそれを踏まえて現場の人を動かす」といった人間力の重要性について議論ができました。
エージェントからはどのような支援を受けましたか
コンサル業界に特化したエージェントを利用しました。まず、業界研究から丁寧にサポートしてもらい、各ファームの特徴や求める人材像を詳しく教えてもらいました。
特に価値があったのはケース面接対策だったと思います。週2回オンラインで模擬面接を実施してもらい、フィードバックを受けながら対策を進められました。土日にご対応いただいたときもあったので本当頭が上がらないです。
職務経歴書の添削でも製造業での経験を魅力的にアピールする方法を学ばせていただきました。
複数のエージェントを検討されましたか?選定基準を教えてください
3社のエージェントと面談しまして、大手総合型が1社、コンサル特化型が2社です。選んだ基準は、担当者の業界理解度と、提供してくれる情報の質と深さで選びました。
選んだエージェントの担当者の方は、ご自身もコンサルティング会社での勤務経験があり、私の状況を深く理解してくれました。各ファームの最新動向だけでなく、入社後のキャリアパスや成長機会についても詳しく説明してくれました。「転職を成功させるだけでなく、転職後に活躍し、成長できるか」という長期的な視点でアドバイスをくれたのが決め手でした。
転職成功の要因と会社選択の決め手
転職活動を振り返ってみて何が成功の要因だったと思いますか
そこまできれいに内定までたどり着いたという自覚はないものの、3つの要因があったと思います。1つ目は、製造業での実務経験を独自の強みとして明確に打ち出せたことです。サプライチェーンマネジメントやオペレーション改善は、多くの企業が直面する課題であり、実践的な知識が評価されたと思います。
2つ目はデータ分析スキルで、生産管理で培ったExcelやPythonを使った分析能力は、コンサルティング業務でも活用できるスキルだったと思います。3つ目は、継続的な改善マインドで、面接で上手くいかなかった点を分析し、次に活かすPDCAサイクルを回し続けたことで、着実に成長できたと思います。
不合格だった企業から学んだことは何ですか
最初に受けた戦略ファームは一次面接で不合格となったのですが、ここで受けたケース面接はいい学びになったと思います。「とある新規事業の収益性を2倍にする方法」という課題で、最初は製造業的な「コスト削減」の視点に偏っていましたが、「網羅的に考え、重要な論点を絞り込む」といったアプローチの重要性に気づかされましたね。
また、別の会社では面接の一部を英語で行うような場面もあり、グローバルで活躍するために必要なスキルを認識するいい機会になったと思います。各面接から学んだことを次に活かすことで、確実にレベルアップできました。
今の会社を選んだ決め手はなんでしたか
最終的には複数のファームから内定をいただけて本当に嬉しかったです。今の会社を選んだ理由は3つありまして、まずは製造業向けのプロジェクトが豊富で、自分の経験を最大限活かしながら、新しいスキルも身につけられる環境だったことが一点目です。
次に人材育成への本気度がありまして、体系的な研修制度とメンター制度があって、未経験からでも着実に成長できるイメージが持てました。最後に、チームワークを大切にする社風に惹かれまして、個人の成果だけでなく、チーム全体での価値創造を重視する文化が、自分の価値観とあっているなと思いました。
他に内定をもらった会社との比較で悩んだ点はありましたか
実はどの会社も魅力的で、贅沢な悩みではあったと思います。ある外資系ファームはグローバルプロジェクトの機会が多く、報酬面でも魅力的なご提案をいただきました。
ただ、今の会社は「人を育てる文化」が特に強く、「3年でしっかりとしたコンサルタントに育てる」という明確なビジョンがあった点が大きかったです。あとは、日系企業の変革支援に強みを持っており、日本企業の競争力向上に貢献したいという私の想いとも合っていたと思います。家族とも相談し、「長期的な成長」を重視して決断しましたが、結果的にこの選択は正解だったと感じています。
転職後の現実 ― 新たな挑戦と成長
今の会社に入ってよかったこと、苦労していることを教えてください
最も良かったのは、圧倒的な成長実感です。毎日が学びの連続で、半年前と比べても、思考力、分析力、プレゼンテーション能力すべてが向上しました。様々な業界のトップ企業の経営課題に携われることは本当に刺激的です。
チャレンジングな点としては、常に高い仕事のクオリティが求められることです。ただ、日々スピード感をもって成長を実感できているので、充実した日々を過ごせているなと思います。プロジェクトごとに異なる課題に取り組むので飽きることがないですし、確かに忙しい時期もあるんですが、チーム全体でサポートし合う文化があるので、一人で抱え込むこともないです。給与も前職から30%くらい上がっているので、努力が正当に評価される環境でもあり、満足しています。
入社前のイメージとのギャップはありましたか
良い意味でのギャップが2つありました。1つは想像以上にチームワークが重要だということです。個人プレーではなく、チーム全体で価値を生み出すことが求められていて、これは前職での経験も活かせる部分でした。
もう1つは、クライアントとの距離の近さです。「外部のアドバイザー」というより「一緒に課題解決するパートナー」として、クライアントと深く関わることができていると思います。時には厳しいフィードバックもあったりするんですが、それだけ真剣に向き合ってもらえている証拠かなと思ってます。現場に入り込んで一緒に汗をかくといったような、泥臭さとやりがいのバランスがコンサルティングの醍醐味だと思います。
具体的に携わっているプロジェクトについて話せる範囲で教えてください
製造業クライアントのDX推進プロジェクトに参画しています。工場のスマート化による生産性向上がテーマで、私の前職の経験も活かせる部分があってアサインされました。
IoTを活用した予知保全システムの導入や、AIを使った品質管理の高度化など、技術を活用した業務改善に取り組んでいます。技術面だけでなく、現場の方々の意識改革や組織変革もサポートしていて、前職では一工場の改善だったところから、今は全社変革に関われるスケールの大きさが魅力的に思っています。働き方としては週3日クライアント先で、現場の方々と議論しながら、プロジェクトを推進しています。
チームワークやメンバーとの関係性はいかがですか
素晴らしいチームに恵まれていると思ってまして、プロジェクトチームは5名で、それぞれ異なるバックグラウンドのメンバーが集まっています。私の製造業の知識が活かせる部分も多く、「現場ではどう考えるか」という視点をよく求められてます。
新卒入社のメンバーもいて、彼らからは構造化思考やプレゼンテーション技術を学びなgら、私からは実務知識を共有する、といったような相互学習の関係ができていますね。マネージャーも「みんなで成長しよう」という姿勢で、忙しくも楽しく働けていると思います。
ワークライフバランスはどのように管理されていますか
プロジェクトによって波はありますが、メリハリをつけて働けています。繁忙期は確かに忙しいですが、プロジェクト間では有給を取得してリフレッシュすることも推奨されています。
最近は業界全体でも働き方改革が進んでいるので、リモートワークも活用しながら効率的に働く工夫ができています。定型的な作業を自動化するツールを開発するといった生産性向上にも取り組んでいて会社も「持続可能な働き方」を重視しているということもあって、長期的にキャリアを築ける環境が整っています。
今後のキャリア展望と後輩へのアドバイス
今後の中長期的なキャリア展望を教えてください
まずは30代前半でマネージャーに昇進し、プロジェクトをリードできる存在になりたいと思ってます。その後は製造業のDXや脱炭素化といった、日本企業が直面する重要課題の専門家として認知されることを目指したいです。
コンサルタントとして学んだ経営視点と製造業での実務経験を掛け合わせて、将来的には日本の産業競争力向上に貢献していきたいです。いずれは学んだことを事業会社で実践する機会も探っていきたいなと思ってます。すぐには難しいと思っていますが、長期的なビジョンとしては、CDOやイノベーション推進室長など、変革をリードするポジションで、企業の成長に直接貢献することが長期的な目標です。
コンサルから事業会社への転職も視野に入れているんですね
はい、コンサルティングキャリアは最高の学びの場だと考えているので、今後の5~7年で集中的に学んで、その後は事業会社で実践するというキャリアパスも検討しています。
将来的な理想は経営に近いポジションで企業変革をリードしたいと考えているので、そのために金融・財務に関する自己学習や、現在の仕事と並行して通学できる大学院への進学も検討しています。会社の支援制度もあるので、タイミングを見て挑戦したいです。
転職して最も成長したと感じる部分はどこですか
間違いなく経営視点です。前職では、どうしても部分最適に陥りがちでしたが、今は企業全体、さらには業界全体を俯瞰して考える習慣が身につきました。
また、コミュニケーション能力も飛躍的に向上したと思います。例えば、要職者への提案、現場へのヒアリング、チーム内での議論など、相手に応じて適切にメッセージを伝える技術が身についていますし、学習スピードも格段に上がったと思います。新しい業界の知識を短期間で吸収し、価値ある提案に昇華させる能力は、どんな環境でも活きるスキルだと思っています。
最後にコンサルティング業界を目指す方々にメッセージをお願いします
異業種からコンサルへの転職は、人生を変える大きなチャンスです。確かに準備は大変ですが、その分得られるものも大きいです。大切なのは、今までの経験を「弱み」ではなく「独自の強み」として捉えることです。
製造業、金融、IT、どんな業界の経験も、必ずコンサルティングで活きます。その経験を言語化し、新しい環境でどう価値を生み出すか、明確にビジョンを持つことが重要です。準備期間は最低3~6ヶ月は必要だと思いますが、この期間も自己成長の貴重な機会にできます。
コンサルティング業界は、確かにチャレンジングな環境ですが、それ以上に刺激的で、成長できる場所です。20代後半から30代前半は、キャリアを大きく変えられる絶好のタイミングです。「このままでいいのか」と思っている方は、ぜひ一歩踏み出してみてください。