DCF法とは?実務で使える計算方法からWACC・ターミナルバリューを解説

M&Aや投資判断の現場で「DCF法で計算しました」と言えば、それだけで説得力が増す——そう思っている方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、計算結果を提示した瞬間に「その割引率の根拠は?」「成長率の前提が甘くないか?」と詰められ、言葉に詰まってしまうケースが後を絶ちません。
本記事では、DCF法の基本から計算手順、Excelでの実装方法に加え、「交渉や報告の場で論破されないための防御ロジック」まで、実務で本当に使える知識を徹底解説します。この記事を読むことで、DCF法の全体像を理解し、自信を持って算定結果を説明できるようになります。
DCF法とは?3分でわかる全体像
DCF法(Discounted Cash Flow法/ディスカウント・キャッシュ・フロー法)とは、企業や事業が将来生み出すキャッシュフローを「現在の価値」に割り引いて評価する手法です。M&Aにおける企業価値評価の代表格であり、インカムアプローチの中核を担います。
将来の収益力を数値化できるため、成長企業の価値算定において最も理論的に優れた手法として広く活用されています。まずは基本的な定義と、どのような場面で使われるのかを押さえておきましょう。
DCF法のわかりやすい定義と基本原理
「今日の100万円」と「1年後の100万円」は同じ価値ではない——この「お金の時間的価値」という考え方がDCF法の根幹です。将来のキャッシュフローを「リスク」と「時間」を考慮した割引率で現在価値に換算し、その合計を企業価値とします。
例えば、1年後に受け取る100万円は、年利5%で割り引くと現在価値は約95万円になります。この概念を事業全体に適用し、将来何年にもわたるキャッシュフローの現在価値を合計することで、企業の本質的な価値を算定するのがDCF法の基本原理です。
DCF法で何がわかるのか(企業価値・株式価値・レンジ)
DCF法で算出されるのは「事業価値(Enterprise Value)」であり、そこから有利子負債を差し引き、非事業用資産を加算することで「株式価値」が導かれます。重要なのは、DCF法で出る数字は「唯一の正解」ではなく「前提条件に基づくレンジ(幅)」であるという認識です。
割引率や成長率の設定次第で結果は大きく変動するため、実務では楽観・標準・悲観の複数シナリオで評価し、「この範囲内に収まる」という形で企業価値を把握することが一般的です。
DCF法が使われる主な場面
M&A・事業承継における売買価格の算定、上場企業の株式評価、投資案件の採否判断(NPV分析)、事業計画の妥当性検証、減損会計やのれんの評価など、DCF法は企業の「将来の価値」を論理的に説明しなければならないあらゆる場面で活用されます。
特にM&Aの交渉現場では、「なぜこの価格なのか」を根拠を持って説明する必要があり、DCF法はその論拠を提供する最も有力な手法として位置づけられています。投資判断においても、将来価値を現在価値に換算できるため、異なる案件の比較検討に活用されています。
DCF法のメリット・デメリット|他の評価手法との違い
DCF法は理論的に優れた手法ですが、万能ではありません。メリット・デメリットを正確に理解し、他の評価手法との使い分けを知ることが、実務での説得力につながります。
ここでは、DCF法の強みと弱みを整理し、実務でどのように活用すべきかを解説します。また、マルチプル法や時価純資産法との比較を通じて、それぞれの手法の特徴と使い分けの考え方を明確にします。
DCF法のメリット|なぜM&Aで重視されるのか
将来の成長性や固有の事業計画を価格に反映できる点、市場株価に左右されない独自の評価ができる点、そして「なぜこの価格なのか」を論理的に説明できる点がDCF法の強みです。特にM&Aの交渉現場では、「根拠のある数字」として相手を納得させる武器になります。
また、感度分析を通じて前提条件の変化が結果に与える影響を可視化できるため、リスクを定量的に把握した上での意思決定が可能になります。企業固有の特性を評価に反映できる点は、他の手法にはない大きなメリットです。
DCF法のデメリット|「数字遊び」と言われないために
一方で、事業計画の精度に大きく依存する点、割引率や成長率の設定に恣意性が入り込みやすい点、計算プロセスが複雑で専門知識を要する点がデメリットです。「前提を変えればいくらでも都合の良い数字が出せる」と批判されることもあり、前提の妥当性を説明できる準備が不可欠です。
特に、将来5年から10年先のキャッシュフローを正確に予測することは本質的に困難であり、その不確実性を認識した上で活用することが求められます。結果を「点」ではなく「レンジ」で示すことが重要です。
【比較表】DCF法 vs マルチプル法 vs 時価純資産法
| 評価手法 | 特徴 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| DCF法(インカム) | 将来CFを現在価値に割引 | 成長企業、M&A | 前提の恣意性 |
| マルチプル法(マーケット) | 類似会社の倍率を適用 | 上場類似企業がある場合 | 「類似」の選定次第 |
| 時価純資産法(コスト) | 資産・負債を時価評価 | 清算価値、含み益大 | 将来性を反映しない |
実務では、DCF法を主軸としつつマルチプル法でクロスチェックするのが一般的です。DCF法は将来の成長性を反映できる一方、マルチプル法は市場の評価を反映できるため、両者を併用することで評価の妥当性を検証できます。
時価純資産法は、収益力よりも資産価値が重視される場面や、清算を前提とした評価に用いられます。それぞれの手法には得意・不得意があるため、対象企業の状況に応じて最適な手法を選択、または複数手法を組み合わせることが重要です。

DCF法の計算に必要な4つの構成要素
DCF法を理解する上で押さえるべき「4つのピース」を先に整理します。計算手順に入る前にこれらの概念を理解しておくことで、後の計算ロジックがスムーズに頭に入ります。
フリーキャッシュフロー、割引率、ターミナルバリュー、永久成長率の4つの要素について、それぞれの意味と役割を解説します。これらは相互に関連しており、一つでも設定を誤ると評価結果全体に大きな影響を与えるため、正確な理解が不可欠です。
フリーキャッシュフロー(FCF)とは|利益との違い
FCF(Free Cash Flow)は、企業が事業活動から生み出す「自由に使えるキャッシュ」です。会計上の利益とは異なり、減価償却費を加算し、設備投資や運転資本の増減を調整した「実際の現金創出力」を表します。計算式は「営業利益×(1−税率)+減価償却費−設備投資−運転資本増加額」となります。
利益が出ていても設備投資が大きければFCFはマイナスになることもあり、逆に利益が少なくても減価償却費が大きければFCFは潤沢になります。このように、FCFは会計上の利益とは異なる視点を提供します。
割引率(WACC)とは|リスクを数値化する
WACC(加重平均資本コスト)は、株主と債権者が期待するリターンを加重平均したもので、「この会社に投資するリスクの大きさ」を表す数値です。割引率が1%変わるだけで企業価値は大きく変動するため、DCF法において最も論点になりやすい要素です。
WACCは「株主資本コスト×株主資本比率+負債コスト×(1−税率)×負債比率」で計算されます。株主資本コストはCAPM理論に基づいて算出するのが一般的で、リスクフリーレート、ベータ値、マーケットリスクプレミアムの3要素で構成されます。
ターミナルバリュー(TV)とは|予測期間以降の価値
ターミナルバリュー(継続価値)は、事業計画の予測期間(通常5年程度)以降、企業が半永久的に生み出す価値の合計です。企業価値全体の60〜80%を占めることも珍しくなく、その設定次第で結果が大きく左右される「危うさ」を持つ要素です。
計算方法には永久成長モデル(ゴードン成長モデル)とマルチプル法の2種類があり、実務では両方で算出してクロスチェックすることが推奨されます。ターミナルバリューの比率が大きすぎるという批判に対しては、予測期間を延長するなどの対応が考えられます。
永久成長率とは|設定の目安と上限ルール
永久成長率(g)は、予測期間以降のキャッシュフローが毎年何%ずつ成長するかを表す数値です。一般的には0%〜2%程度(名目GDPやインフレ率を上限の目安)に設定され、割引率(WACC)を超えてはならないという絶対ルールがあります。
永久成長率がWACC以上になると計算式がエラーになるため、この点は必ず確認が必要です。また、永久成長率を高く設定しすぎると企業価値が過大に算出されるため、保守的な設定が求められます。日本企業の場合、0〜1%程度に設定するケースが多いです。
【実践】DCF法の計算手順を5ステップで図解
ここからは、実際にDCF法で企業価値を算出する手順を5つのステップに分けて解説します。各ステップで「何をするのか」「なぜそうするのか」「実務でよくある論点は何か」を明確にしていきます。
この手順を理解することで、Excelでの実装やレビューの際に迷うことがなくなります。初めてDCF法を使う方も、この順序に沿って進めれば正しく企業価値を算定できるようになります。
事業計画を入手し、予測期間を決める
まず、対象企業の事業計画(売上・利益・投資計画など)を入手し、何年先までを「予測期間」とするかを決定します。一般的には5年程度ですが、事業が安定するまでの期間を考慮して設定します。成長フェーズにある企業や、大型投資の回収期間が長い企業では、7〜10年に延長することもあります。
実務ポイントとして、事業計画の「楽観度」を検証する視点が重要です。過去実績との乖離がないか、業界成長率と整合しているか、経営施策の具体性はあるか、といった観点で計画の妥当性を確認します。
将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を算出する
事業計画に基づき、各年度のFCFを計算します。基本式は「営業利益×(1−税率)+減価償却費−設備投資−運転資本増加額」です。符号の間違い(運転資本の増加はマイナス)が頻発するポイントなので注意が必要です。
運転資本が増加するとキャッシュが運転資本に拘束されるため、FCFのマイナス要因となります。逆に、運転資本が減少すればキャッシュが解放されるため、FCFのプラス要因となります。設備投資と減価償却費の二重計上にも気をつけましょう。
割引率(WACC)を算定する
株主資本コスト(CAPM理論に基づく)と負債コストを、資本構成比率で加重平均してWACCを算出します。株主資本コストは「リスクフリーレート+ベータ値×マーケットリスクプレミアム」で計算します。
β値、リスクフリーレート、マーケットリスクプレミアムの設定根拠を明確にしておくことが、後の「防御」につながります。非上場企業の場合は類似上場企業のβ値を参考にし、規模リスクプレミアムを上乗せするのが実務慣行です。WACCの算出根拠は必ず文書化しておきましょう。
ターミナルバリュー(TV)を計算する
予測期間最終年度のFCFを基に、永久成長モデル(ゴードン成長モデル)でTVを算出します。計算式は「最終年度FCF×(1+永久成長率)÷(WACC−永久成長率)」です。成長率がWACC以上になるとエラーになる点に注意してください。
また、TVが企業価値全体に占める比率が大きくなりすぎる場合は、マルチプル法(EV/EBITDA倍率を適用)でも算出し、クロスチェックすることが推奨されます。TVの妥当性は特に論点になりやすいため、算出根拠を明確にしておくことが重要です。
現在価値に割り引き、企業価値・株式価値を算出する
各年度のFCFとTVを、それぞれの年数に応じた割引係数(1÷(1+WACC)^n)で現在価値に換算し、合計します。これが事業価値(EV)です。さらに非事業用資産(余剰現金、投資有価証券など)を加算し、有利子負債を差し引くことで株式価値が算出されます。
M&Aにおいては、この株式価値が株式譲渡価格の基準となります。企業価値と株式価値の違いを正確に理解することが、交渉において非常に重要です。誤解があると価格交渉で大きな齟齬が生じます。
【Excel実践】DCF法のモデル構築とテンプレート活用
計算の理論を理解したら、実際にExcelで手を動かしてみましょう。DCF法の醍醐味は「前提を変えると結果がどう変わるか」をシミュレーションできる点にあります。
ここでは、実務で使えるExcelモデルの構築方法と、感度分析の作り方を解説します。Excelでモデルを組むことで、前提条件を柔軟に変更しながら複数のシナリオを検討でき、より精度の高い意思決定が可能になります。
DCF法Excelモデルの推奨シート構成
Input(前提条件シート)、Calculation(計算シート)、Output(結果サマリシート)、Check(整合性チェックシート)の4シート構成が推奨されます。
前提を変えるときはInputシートのみを修正し、計算結果は自動で反映される設計が理想です。Inputシートには、売上成長率、営業利益率、設備投資額、WACC、永久成長率などの主要パラメータを集約します。この構成にすることで、前提条件の変更が容易になり、感度分析やシナリオ分析も効率的に実施できます。
予測期間(1〜5年目)の割引計算|NPV関数の活用
Excelでは、各年度のFCFをNPV関数やXNPV関数で現在価値に換算できます。ただし、NPV関数は「期末割引」を前提としているため、実務でより正確な「期中割引(Mid-year Convention)」を使う場合は手計算での調整が必要です。
期中割引は、キャッシュフローが年度末に一括発生するのではなく、年度を通じて平均的に発生すると仮定する方法で、より実態に近い評価ができます。NPV関数の戻り値は1期前の価値になる点にも注意が必要です。
感度分析・シナリオ分析の作り方|データテーブル機能
「割引率」と「永久成長率」の2変数を動かした感度分析表(データテーブル機能)を作成することで、前提条件の変化が企業価値に与える影響を可視化できます。Excelの「データ」タブから「What-If分析」→「データテーブル」を選択し、行と列にそれぞれの変数を設定します。
交渉の場で「最悪でもこの範囲」「最良ならここまで」と幅を持って説明できる強力な武器になります。シナリオ分析では、楽観・標準・悲観の3パターンを用意し、それぞれの前提条件と結果を整理します。
【差別化セクション】実務で”論破されない”ための防御ロジック
多くの記事では「計算方法」の解説で終わりますが、実務で本当に困るのは算出した数字の根拠を問われたときです。ここでは、M&A交渉や社内報告で頻出する「ツッコミ」とその反論ロジックを整理します。
これを押さえておくことで、自信を持って算定結果を説明できるようになります。「なぜその数字なのか」を論理的に説明できることが、DCF法を「使える武器」にするための鍵です。
「割引率(WACC)が高すぎる/低すぎる」と言われたら
割引率の設定は最も議論になるポイントです。反論の基本は「ソースの明示」と「業界比較」です。リスクフリーレートは国債利回り、マーケットリスクプレミアムは大手証券会社や学術論文のデータを引用し、「業界平均と大きく乖離していない」ことを示すのが定石です。
具体的には「リスクフリーレートは10年国債利回りの◯%を採用」「ベータ値は類似上場企業◯社の平均値を使用」「マーケットリスクプレミアムは◯◯証券のレポートを参照」といった形で、すべての数値に出典を明記しておきましょう。
「成長率の前提が甘い」と言われたら
事業計画の成長率が楽観的だと指摘された場合、過去実績との比較、業界成長率との整合性、経営施策の具体性(なぜ成長できるのか)の3点で反論します。
「過去5年の平均成長率は◯%であり、計画値はこれを下回る水準」「業界全体の成長率は年◯%であり、計画はこれと整合的」「◯◯という施策により売上増加を見込んでいる」といった形で、定量的な根拠を示すことが重要です。また、保守・標準・楽観の3シナリオを提示し「どのケースでもこの範囲」と幅で説明するのも有効です。
「ターミナルバリューの比率が大きすぎる」と言われたら
TVが企業価値の70〜80%を占めるのはDCF法の構造上避けられません。この指摘への対応としては、①永久成長モデルとマルチプル法(EV/EBITDA)の両方でTVを算出しクロスチェックする、②予測期間を延長してTVの比率を下げる、という2つのアプローチがあります。
「永久成長モデルでは◯億円、EV/EBITDAマルチプル◯倍では◯億円であり、両者の乖離は◯%以内」といった形で説明できると説得力が増します。TVの算出方法を複数示すことで、恣意性がないことを示せます。
非上場・中小企業でβ値がない場合の対処法
上場企業のデータがない中小企業のDCF評価では、類似上場企業のβ値をアンレバードβに変換して使う、または業種別の平均β値を参照します。加えて、規模リスクプレミアム(サイズプレミアム)を上乗せするのが実務慣行です。
「類似上場企業◯社のレバードβの平均値◯をアンレバード化し、対象企業の資本構成でリレバードした結果◯を採用」「規模リスクプレミアムとして◯%を加算(出典:◯◯)」といった形で、出典を明記して「恣意的ではない」ことを示しましょう。
【応用】不動産投資におけるDCF法の活用
DCF法は企業価値評価だけでなく、不動産投資の収益シミュレーションにも広く用いられます。対象は異なりますが、考え方の基本は共通です。
将来の収益を現在価値に割り引くという原理を、不動産投資にどう適用するかを解説します。不動産投資家にとって、DCF法を理解しておくことは、物件選定や銀行融資の際に大きなアドバンテージになります。
不動産DCF法の基本|NOIとキャップレートの関係
不動産DCF法では、賃料収入から経費を差し引いた純営業収益(NOI)を将来にわたって予測し、割引率で現在価値に換算します。最終年度の売却価格(復帰価格)を加算して不動産の収益価格を算出します。キャップレート(還元利回り)は、企業評価におけるWACCに相当する概念で、不動産投資のリスクを反映した数値です。
NOIをキャップレートで割ることで不動産の価値が算出されます。不動産DCF法では、空室率や賃料下落リスクなど、不動産特有の要素を考慮した予測が必要となります。
銀行融資に通すための簡易DCFシミュレーション
銀行への融資申請では、「収益還元法(DCF法を簡略化した手法)」に基づく収益試算表が求められることがあります。入力項目を家賃収入・空室率・経費率・売却想定に絞った簡易版DCFでも、論理的な収益根拠として機能します。
「年間家賃収入◯万円、空室率◯%を見込み、経費率◯%で試算した結果、NOIは◯万円」「10年後の売却価格はキャップレート◯%で◯万円と想定」といった形で整理することで、銀行担当者にも理解しやすい資料になります。投資家にとって必須の知識です。
DCF法の「よくある失敗」と回避チェックリスト
DCF法の計算では、経験者でもやりがちなミスがあります。提出前・報告前に以下のチェックリストで最終確認を行いましょう。
これらのミスは企業価値の算定結果に大きな影響を与えるため、必ず確認することをお勧めします。特に初めてDCF法を使う方は、これらのポイントを事前に把握しておくことで、致命的なエラーを防ぐことができます。
計算ミス・設定ミスのチェックポイント5選
- 名目値と実質値の混在:成長率や割引率はすべて名目で統一されているか
- 永久成長率≧割引率になっていないか:計算式がエラーになる致命的ミス
- 運転資本の符号ミス:増加はFCFのマイナス、減少はプラス
- 二重計上:設備投資が減価償却と重複してカウントされていないか
- 税率の整合性:FCFの税率とWACCの税効果の税率は統一されているか
これらのチェックポイントをExcelのCheckシートにまとめ、計算の整合性を自動検証する仕組みを作っておくと安心です。特に、符号ミスや二重計上は目視では発見しにくいため、計算式を追跡してロジックを確認することが重要です。
また、第三者によるレビューを受けることで、思い込みによるミスを防ぐことができます。最終提出前には必ずこのチェックリストに基づいて確認を行う習慣をつけましょう。
DCF法の計算結果をどう使うか|意思決定につなげる視点
計算して終わりではなく、その結果を「どう解釈し、どう使うか」が実務の本質です。DCF法で算出した企業価値を、M&A交渉や投資判断、社内報告の場でどのように活用するかを解説します。
正しい使い方を知ることで、DCF法の価値を最大限に引き出すことができます。算定結果を意思決定に効果的につなげるための視点を身につけましょう。
企業価値は「点」ではなく「レンジ」で持つ
DCF法の結果は前提条件次第で大きく変わるため、「◯◯億円」という一点ではなく「△△億円〜□□億円」というレンジで把握・提示するのが実務の基本です。感度分析表をもとに「堅実シナリオでも最低このくらいの価値がある」と説明できる状態を作りましょう。
レンジで示すことで、交渉においても「最低ラインはここ」「上振れすればここまで」という形で柔軟な対応が可能になります。また、前提条件の不確実性を認めた上での提示は、かえって信頼性を高めます。
複数の評価手法を併用する重要性
DCF法だけでなく、マルチプル法や取引事例比較法など複数の手法で評価を行い、結果を突き合わせることで「妥当な価格帯」の信頼性が高まります。それぞれの手法で近い結果が出れば説得力が増し、乖離があれば「なぜか」を説明する材料になります。
例えば「DCF法では◯億円、マルチプル法では◯億円であり、両者の中央値を採用」といった形で複数手法の結果を総合することで、より客観的で説得力のある評価が可能になります。
DCF法に関するよくある質問(FAQ)
まとめ|DCF法を「使える武器」にするために
本記事の要点
- DCF法は将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を評価する手法
- 計算の4大要素は「FCF」「割引率(WACC)」「ターミナルバリュー」「永久成長率」
- Excelで感度分析・シナリオ分析を行い、結果は「レンジ」で把握する
- 実務で重要なのは計算より「前提の妥当性」と「論破されない根拠」
- 複数の評価手法を併用し、クロスチェックすることで説得力が高まる
次にやるべきアクション
まずはExcelでシンプルなDCFモデルを組んでみましょう。架空の数字でよいので、FCF予測→WACC設定→TV計算→現在価値算出の一連の流れを体験することで、理論と実践が結びつきます。そして必ず感度分析を行い、「どの変数が結果に最も影響するか」を把握してください。
その上で、本記事で紹介した「防御ロジック」を整理し、どんな質問にも答えられる準備をしておくことが、DCF法を「使える武器」にする第一歩です。


