【転職体験談】監査法人から FAS へ!攻めのキャリアに挑戦する公認会計士

Iさん(29歳・男性)は有名国立大学を卒業後、Big4系監査法人に入社し、約5年間、監査業務に従事した後、29歳で外資系FASへ転職されました。現在はM&Aや事業再生などのアドバイザリー業務に携わっていらっしゃます。転職を通じて「守りの会計」から「攻めの会計」へとキャリアの軸足を移した経験を語っていただきました。
- お名前:Iさん(男性) ※仮名
- 年齢:29歳
- 学歴:有名国立大学卒(商学部)
- 職歴:Big4系監査法人(監査業務)→外資系FAS(コーポレートファイナンス)
監査法人時代のキャリアと仕事内容
現職までのご経歴を教えていただけますか
大学を卒業して、そのままBig4系の監査法人に入社しました。在学中に公認会計士試験に合格していたので、新卒で監査法人に入るという、まあ王道のルートですね。
最初の2年間は、いわゆる「スタッフ」として、先輩の指示のもとで監査調書を作ったり、クライアント先で資料を集めたりという業務が中心でした。3年目からは「シニアスタッフ」に昇格して、自分が担当する勘定科目を持つようになりました。棚卸資産とか固定資産とか、そのあたりを一人で回すようになって、ようやく「監査をやってる」という実感が湧いてきた感じです。
担当していたのは主に製造業のクライアントで、売上規模でいうと500億〜2,000億円くらいの中堅企業が多かったですね。繁忙期の4〜5月は本当に忙しくて、終電どころか会社に泊まることも珍しくありませんでした。ただ、その分チームの結束力は強くて、同期や先輩との関係性は今でも財産だなと思っています。
監査業務のやりがいや面白さはどんなところにありましたか
これ、ちょっと正直に言っていいですか(笑)。監査って、世間的には「つまらない」とか「地味」とか言われがちなんですけど、僕は結構好きだったんですよね。
何がいいかって、会社の全体像が見えるところです。財務諸表って会社の「健康診断書」みたいなものなので、それを細かく見ていくと、この会社は在庫が多すぎるなとか、設備投資のタイミングが悪かったなとか、経営の実態が手に取るようにわかるんです。入社3年目くらいから、数字の裏にあるストーリーが読めるようになってきて、それが面白かったですね。
あと、監査って「間違い探し」じゃなくて「リスクを見極める仕事」なんですよ。どこにリスクがあるかを仮説立てて、それを検証していく。その仮説が当たったときは、ちょっとした探偵気分でした(笑)。クライアントの経理部長に「よくそこ気づきましたね」と言われたときは、素直に嬉しかったです。
当時の働き方や年収について教えてください
働き方は、正直かなりハードでした。繁忙期は月の残業が60時間くらいいくこともありましたし、土日出勤も普通にありました。ただ、閑散期は比較的ゆるくて、定時で帰れる日も多かったので、年間トータルで見ると「まあこんなもんか」という感じでしたね。
年収は、同世代の中では悪くない水準だったと思います。監査法人の給与体系って、わりと年功序列的なところがあって、同期と大きく差がつくことはないんですよね。逆に言うと、頑張っても頑張らなくても給料は同じなので、そこにモヤモヤを感じている同期は多かったです。僕もその一人でした。
福利厚生は充実していて、有給も取りやすい雰囲気はありました。ただ、繁忙期に有給取る勇気は僕にはなかったです(笑)。
転職を決意した理由と葛藤
転職を考えはじめたきっかけや理由を教えてください
明確な「きっかけ」があったわけではないんですけど、入社4年目くらいから漠然と「このままでいいのかな」という気持ちが芽生えてきました。
監査って、どうしても「過去を検証する仕事」なんですよね。会社が作った財務諸表が正しいかどうかをチェックする。それ自体は社会的に意義のある仕事だと思うんですけど、僕はだんだん「過去じゃなくて未来に関わりたい」と思うようになりました。
決定的だったのは、担当していたクライアントがM&Aで買収されたときです。買収後の統合プロセスで、うちのFASチームが入っていて、彼らの仕事を横目で見ていたんですよね。PMIの計画を立てたり、シナジー効果を試算したり。同じ「会計」をベースにした仕事なのに、全然違うアプローチだなと。監査は「答え合わせ」だけど、FASは「答えを作る」仕事だと感じて、そっちに惹かれるようになりました。
転職を決断するまでに葛藤はありましたか
めちゃくちゃありました(笑)。ぶっちゃけ、監査法人って居心地いいんですよ。給料はそこそこ高いし、社会的な信用もある。同期も優秀な人が多くて、刺激もある。辞める理由を探すのが難しいくらいでした。
一番の葛藤は「せっかく取った会計士資格を活かせるのか」という点でした。FASに行くと、監査のスキルはあまり使わなくなる。それって、今まで積み上げてきたものを捨てることになるんじゃないかって。
あと、家族の反応も気になりました。両親は地方出身で、堅実な考え方をする人たちなので、「せっかく大手に入ったのに」と思われるんじゃないかって。実際、転職の話をしたときは「え、辞めるの?」という反応でしたね。でも、最終的には「お前の人生だから、好きにすればいい」と言ってもらえて、それで踏ん切りがつきました。
転職を決断した最終的な決め手は何でしたか
30歳という節目を意識したのは大きかったです。監査法人にいると、30代前半で「マネージャー」に昇格するのが一般的なキャリアパスなんですね。マネージャーになると、クライアント対応や部下の管理が中心になって、現場の実務から離れていく。
僕は「まだ現場で手を動かしたい」という気持ちが強かったんです。FASに行けば、M&Aの案件で財務DDをやったり、バリュエーションをやったり、まさに「手を動かす」仕事ができる。これは30代前半のうちにやらないと、チャンスを逃すなと思いました。
あとは、単純に「やってみたい」という好奇心ですね。M&Aの世界って、監査とは全然違う緊張感があるんです。秘密保持契約でガチガチに縛られて、限られた情報と時間の中で企業の価値を見極める。そのスリルを味わってみたいと思いました。
転職活動のプロセスと苦労
転職活動を進める中で苦労したのはどのような点ですか
一番苦労したのは、時間の確保ですね。監査の繁忙期と転職活動が重なると本当にキツくて。面接の日程調整がうまくいかなくて、何度もリスケしてもらったことがありました。
あと、意外と大変だったのが「志望動機の言語化」です。「FASに行きたい」という気持ちはあるんですけど、それを面接で説得力を持って伝えるのが難しかった。最初の頃は「M&Aに興味があります」みたいな浅い回答しかできなくて、面接官に「で、なんでM&Aなの?」と突っ込まれて、しどろもどろになったこともあります。
監査の経験をどうFASの仕事に結びつけるか、というストーリー作りには時間がかかりました。最終的には「監査で培った財務分析のスキルを、M&Aのデューデリジェンスで活かしたい」という軸が固まって、そこからは面接もスムーズになりましたね。
転職活動の準備はどのように進めましたか
まずは情報収集から始めました。FASって、監査法人にいると名前は聞くけど、実際に何をやっているかはぼんやりとしかわからない。なので、FASに転職した先輩や、転職エージェントに話を聞いて、業務内容や求められるスキルを把握することから始めました。
書類作成は、最初は自分で書いたんですけど、エージェントに見せたら「これじゃ伝わらない」とバッサリ言われて(笑)。そこから何度も添削してもらって、ようやく形になりました。特に職務経歴書は、「監査法人で何をやってきたか」を具体的に数字で示すように意識しました。担当クライアント数、売上規模、チームの人数とか。
面接対策は、想定質問を50個くらいリストアップして、それぞれに対する回答を準備しました。エージェントとの模擬面接も3〜4回やりましたね。最初は全然ダメで、「もっと具体的に」「なぜそう思ったのか」とツッコまれまくりました。でも、そのおかげで本番では落ち着いて話せました。

複数社を受けましたか?選考の手応えはいかがでしたか
FAS系を中心に、4社受けました。Big4系のFASが3社と、独立系のM&Aアドバイザリーファームが1社。
選考の手応えでいうと、やっぱり「監査経験をどう活かすか」を明確に語れるかどうかで、面接官の反応が全然違いましたね。ある会社の面接では、「監査で見つけた不正リスクをどう対処したか」という質問があって、具体的なエピソードを話したら、面接官がすごく食いついてくれた。やっぱりFASの人たちは、実務で使えるスキルを見ているんだなと実感しました。
逆に、独立系のファームは落ちました。理由は明確には聞いていないんですが、おそらく「なぜ独立系なのか」という問いに対する答えが弱かったんだと思います。Big4系との違いを深く理解しないまま受けてしまったのは反省点ですね。
エージェント活用と面接対策
エージェントからはどのような支援を受けましたか
転職エージェントは2社使いました。1社はFASやコンサル業界に強いブティック系のエージェントで、もう1社は大手の総合型エージェントです。
結果的に、ブティック系のエージェントのほうが圧倒的に役立ちました。業界に特化しているだけあって、各社の選考の特徴や、面接で聞かれやすい質問をかなり細かく教えてもらえたんです。「これから受ける外資系FASの一次面接は、ケース面接はないけど、志望動機を深掘りされるから準備しておいて」とか、そういう具体的な情報がありがたかったですね。
あと、年収交渉も全部エージェントにお任せしました。自分ではなかなか「もっと上げてください」とは言いづらいじゃないですか。エージェントが間に入ってくれたおかげで、現年収以上のオファーをいただけました。これは本当に助かりましたね。
面接で印象に残っている質問はありますか
「あなたが監査で見つけた問題の中で、一番インパクトが大きかったものは何ですか?」という質問は印象に残っています。
この質問、単に「不正を見つけた」みたいな話を期待しているわけじゃないんですよね。監査人としてリスクをどう評価して、どういうアプローチで検証して、結果としてクライアントにどんな価値を提供したか。そこまで含めて聞かれている。
僕は、担当クライアントで売上の計上タイミングに問題があることを発見したエピソードを話しました。単に「間違いを見つけた」で終わらせず、「なぜその問題が起きたのか、業務フローの改善提案までした」という点を強調したら、面接官がうなずいてくれて。やっぱりFASは「問題を見つけて終わり」じゃなくて、「その先のソリューションまで提案できるか」を見ているんだなと感じました。
面接で失敗したエピソードがあれば教えてください
ありますよ(笑)。ある会社の二次面接で、「M&Aのバリュエーションについてどの程度知っていますか?」と聞かれて、正直に「実務経験はありません」と答えたんです。そこまでは良かったんですけど、その後「じゃあDCF法について説明してください」と言われて、頭が真っ白になりました。
概念としては知っていたんですけど、いざ説明しろと言われると、うまく言葉が出てこなくて。結局、しどろもどろの説明になってしまいました。その面接は通過したんですけど、「事前の知識インプットが甘かった」と猛省しましたね。
その経験から、FASの実務で使う基礎知識は、本やネットで一通り勉強してから面接に臨むようにしました。実務経験がないのは仕方ないけど、「勉強する意欲」を見せることは大事だと思います。

今の会社を選んだ理由と入社後の変化
今の会社を選んだ決め手はなんでしたか
決め手は大きく3つあります。
1つ目は、M&Aだけじゃなくて事業再生もできること。FASって会社によって得意分野が違うんですよね。M&Aに特化しているところもあれば、再生案件が多いところもある。僕は「企業が困っているときに助ける」という仕事に興味があったので、再生案件にも携われる環境は魅力的でした。
2つ目は、面接での印象です。面接官だったマネージャーの方が、すごく率直に仕事の厳しさを話してくれたんですよね。「正直、激務です。でも、その分成長できる環境だと思います」と。変に良いことばかり言わないところに、逆に信頼感を持ちました。
3つ目は、キャリアパスの柔軟性です。FASで経験を積んだ後、事業会社のCFOを目指すのか、PEファンドに行くのか、独立するのか。いろんな選択肢があることを、面接で確認できたのは大きかったですね。「この会社に骨を埋める」というよりは、「次のキャリアにつながるスキルを身につける場所」として選びました。

今の会社に入ってよかったこと、苦労していることを教えてください
よかったことは、圧倒的に「成長スピード」ですね。入社して1年ちょっとですが、監査法人にいた5年間より濃密な経験を積んでいる実感があります。
特に印象に残っているのは、入社3ヶ月目で担当したM&A案件のデューデリジェンスです。売り手企業の財務諸表を2週間で分析して、買収価格に影響するリスクを洗い出す。監査と違って「正解」がない中で、自分なりの仮説を立てて、上司やクライアントに提案する。そのプロセスがめちゃくちゃ刺激的でした。
苦労していることは、やっぱり「知識の幅」ですね。監査は会計基準と監査基準を押さえておけばなんとかなりますが、FASは会計だけじゃなくて、法務、税務、事業戦略、業界動向……と、守備範囲が広い。常に勉強し続けないといけないプレッシャーはあります。
あとは、クライアントとのコミュニケーションの難しさ。監査は「検証する側」として一歩引いた立場でしたが、FASは「一緒に考える」立場。クライアントの経営者と対等に議論するためには、単なる会計知識だけじゃ足りないんだなと痛感しています。
転職前に想像していた仕事と、実際の仕事にギャップはありましたか
ありました。一番のギャップは「地味な作業も多い」ということ(笑)。
FASって、華やかなM&Aの世界というイメージがあると思うんですけど、実際には細かいエクセル作業や資料作成がかなりの割合を占めます。財務データを整理して、分析して、それをパワーポイントにまとめて……という作業を、深夜まで延々とやることもあります。
でも、その地味な作業の積み重ねが、最終的にクライアントの意思決定を左右する。そう思うと、一つ一つの作業に意味を感じられるようになりました。監査も同じで、細かい調書作成があってこそ、監査意見が出せる。そういう意味では、「地道さが大事」という点は共通しているのかもしれません。

今後のキャリア展望と転職を考えている方へのアドバイス
今後のキャリア展望を教えてください
正直、まだ明確に決めているわけではないんですが、いくつか選択肢は考えています。
一つは、FASでマネージャー、シニアマネージャーとキャリアアップしていく道。M&Aや再生の案件をリードできるようになったら、自分の市場価値はさらに上がると思います。
もう一つは、PEファンドへの転職。FASでDDやバリュエーションの経験を積むと、PEファンドへの転職は現実的な選択肢になります。投資判断に関わるという点で、より「攻め」のキャリアになりますね。
あとは、事業会社のCFOや経営企画というキャリアも視野に入れています。M&Aのアドバイザー側ではなく、当事者として意思決定する側に立つのも面白そうだなと。いずれにせよ、今は「選択肢を広げる」時期だと思っているので、目の前の案件に全力で取り組むことを優先しています。

監査法人からFASへの転職を考えている人にアドバイスをお願いします
まず伝えたいのは、「監査の経験は無駄にならない」ということです。僕も転職前は「監査しかやってないけど大丈夫かな」と不安でしたが、監査で培った財務分析のスキルは、FASでめちゃくちゃ役立っています。
財務諸表を読み解く力、リスクを見極める力、クライアントとコミュニケーションする力。これらは監査法人で自然と身につくスキルで、FASでもそのまま使えます。むしろ、監査経験者だからこそ持っている「数字の裏側を見抜く目」は、FASでも重宝されると感じています。
ただ、「監査が嫌だからFASに行く」という理由だけだと、ちょっと危険かもしれません。FASは監査より忙しいし、求められるスピードも速い。「監査より楽になりたい」という期待で転職すると、ギャップに苦しむと思います。「何をやりたいか」を明確にした上で転職することをおすすめします。
転職活動中の自分にアドバイスするとしたら、何と言いますか
「もっと早く動けばよかった」ですね(笑)。
僕は転職を考え始めてから実際に動くまで、1年以上かかりました。「まだ早いかな」「もう少し経験を積んでから」と、ずるずる先延ばしにしていたんです。でも、今思えば、もっと早く情報収集だけでも始めておけばよかった。
転職って、いざ動き出すと意外と時間がかかるんですよね。エージェントとの面談、書類作成、面接対策……と、最低でも3〜4ヶ月はかかります。繁忙期と重なると、さらに長引く。なので、「転職するかどうか迷っている」という段階でも、まずはエージェントに話を聞いてみることをおすすめします。
あと、「完璧な準備ができてから動こう」と思わないこと。僕も最初は自信がなくて、「もっとFASのことを勉強してから」と思っていました。でも、結局は実務を経験しないとわからないことも多い。ある程度の準備ができたら、思い切って飛び込む勇気も大事だと思います。
最後に、転職を迷っている方へメッセージをお願いします
僕は転職して本当によかったと思っています。もちろん、大変なことも多いし、監査法人に残っていれば楽だったかもしれない。でも、「あのとき挑戦しなかったらどうなっていただろう」と後悔するよりは、ずっといい。
転職って、正解がないじゃないですか。行ってみないとわからない。だからこそ怖いし、迷う。でも、迷っているということは、心のどこかで「変わりたい」と思っている証拠だと思うんです。
僕が一つ言えるのは、「今の環境に違和感を感じているなら、その感覚を大事にしてほしい」ということ。違和感を無視して働き続けると、どこかで限界が来る。だったら、まだ体力も気力もある20代、30代のうちに、一歩踏み出してみてもいいんじゃないかなと思います。
もちろん、転職が全員にとっての正解ではないです。今の会社で頑張るという選択も、立派なキャリアです。大事なのは、「自分で選んだ」という納得感。それさえあれば、どんな選択をしても後悔しないと思います。
この記事を読んでいる方が、自分なりの答えを見つけられることを願っています。


