コンサルはいらないのか?|AI時代に問い直す必要性と失敗しない活用法

「コンサルに高額な費用を払ったのに、成果が見えない」「立派な報告書だけ残して去っていった」——コンサルティングへの不満や懐疑の声は、決して珍しくありません。一方で、コンサルなしでは成し得なかった変革事例も数多く存在します。
本記事では「コンサルはいらない」と言われる7つの構造的理由を紐解きながら、それでも必要になる5つのパターン、活用する場合の失敗しない発注の鉄則、AI時代の最適な使い分けまでを網羅的に解説します。読了後には、あなたの会社にとってコンサルが本当に必要かどうか、明確な判断基準を持てるようになるでしょう。
なぜ「コンサルはいらない」と言われるのか
コンサルティングへの不満や懐疑は、単なる感情論ではありません。業界構造に起因する合理的な理由が存在します。企業がコンサルタントに抱く不信感の正体を正確に理解することで、自社にとっての必要性を客観的に判断できるようになります。
ここでは「なぜコンサルはいらないと言われるのか」について、構造的理由をいくつか解説します。これらの理由を把握することで、コンサル活用を検討する際の判断材料として活用できるでしょう。
高額フィーに見合う成果が「見えない」
コンサルティングファームへの報酬は、月額数百万円から数千万円に達することも珍しくありません。しかし、戦略策定や組織変革といったプロジェクトでは、成果を数値化しにくいケースが多く存在します。
「結局、何に対してこれだけの費用を払ったのか」という疑問が残りやすく、費用対効果の可視化が困難なビジネスモデル自体が、不要論を生む温床となっています。成果指標を事前に設定していない場合、この問題はさらに深刻化します。

「正論」だが現場で動かない提案
コンサルタントが提示する戦略は、理論的には正しいものが多いです。しかし、現場の実情や組織文化を十分に理解しないまま作成された提案は、実行段階で頓挫しがちです。
「言っていることは分かるが、うちでは無理だ」という反応が繰り返されると、クライアント企業内でコンサルの存在意義が問われます。現場との乖離が生まれる背景には、短期間で成果を求められる業務構造も影響しています。
提案と実行が分離し「絵に描いた餅」で終わる
多くのコンサルティングファームでは、提案フェーズで契約が終了し、実行は顧客任せとなるケースが一般的です。立派な報告書と美しいスライドだけを残して去っていった——そんな経験を持つ企業は少なくありません。
この「提案と実行の分離」は、業界の収益モデルに起因する構造的な課題です。結果として、成果が出ないままプロジェクトが終了し、不要論が強化されていきます。

若手中心のチーム編成で品質がブレる
コンサルティングファームの多くは、提案時にはシニアコンサルタントが対応しますが、実務は経験の浅い若手が中心となるレバレッジモデルを採用しています。
この仕組みにより、クライアントが期待した品質が得られないケースが発生します。経験豊富な人材がプロジェクトに十分な時間を割けない状況は、成果物の質に直結する問題です。担当者の能力やスキルにばらつきが生じやすい構造といえます。
「丸投げ発注」が失敗を招くが責任はどこに
発注側の目的が曖昧なまま「とりあえずコンサルに頼もう」という姿勢でプロジェクトを開始すると、確実に迷走します。課題設定が不明確では、どれだけ優秀なコンサルタントでも解決策を導き出せません。しかし、失敗の責任は往々にしてコンサル側に帰されます。
この構図が繰り返されることで、業界全体への不信感が蓄積されていきます。丸投げ発注は双方にとって不幸な結果を招くのです。
社内に優秀な人材がいれば内製できるという正論
本質的に考えれば「できる人がやればいい」という話であり、外部に高額な費用を支払う必然性は薄れます。特にデジタル人材の採用が進んだ企業では、分析や戦略立案を内製化する動きが加速しています。
社内に必要なスキルを持つ人材が存在するなら、時間をかけてでも自社で取り組む方が、ナレッジも蓄積され長期的な価値を生み出せます。この正論が、コンサル不要論の根拠となっています。
参考:DX白書2023 | 書籍・刊行物 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
生成AIで代替できる領域が急拡大している
ChatGPTをはじめとする生成AIは、情報収集や資料作成といったコンサル業務の一部を代替し始めています。市場調査レポートの作成、競合分析、データの可視化など、パターン化できる業務はAIが得意とする領域です。
「AIに聞けば済む」作業が広がるほど、コンサルタントの付加価値は問い直されます。AI時代において、コンサルの存在意義は大きな変化を迫られています。

それでもコンサルが「必要になる」典型パターン
不要論には一理ありますが、コンサルでなければ解決できない領域も確実に存在します。企業が直面する課題の性質によっては、外部専門家の支援が合理的な選択となるケースがあります。
以下のパターンに該当する場合、コンサルタントの活用は検討に値するでしょう。自社の状況と照らし合わせて、必要性を判断してください。
問題設定自体が複雑で利害関係が絡む
「何が問題なのか」を特定すること自体が難しいテーマや、社内の利害対立が絡むケースでは、第三者の視点が不可欠です。コンサルタントは「問いを立てる」専門家としての価値を発揮します。
複雑な経営課題に対して、客観的な立場から本質的な問題を抽出し、解決の方向性を示すことができます。社内だけでは見えにくい視点を提供することで、意思決定の質を高める役割を担います。
社内だけでは推進力や合意形成が足りない
優秀な人材が社内にいても、本業との兼務ではプロジェクトの推進力に限界があります。また「外部の専門家も同じ結論に達した」という形式が、組織内の合意形成を後押しするケースは少なくありません。
経営者や事業責任者が改革を進めたくても、従業員からの抵抗がある場合、コンサルタントの存在が突破口となることがあります。推進力と客観性の両面で価値を発揮できるのです。
短期間で型を作り再現性を持たせたい
業務プロセスの標準化、マニュアル整備、人材育成体制の構築など「型化」を短期間で実現したい場合、コンサルのノウハウは有効です。ゼロから社内で試行錯誤するより、実績のある方法論を導入する方が効率的な場面があります。
これは「時間を買う」という考え方であり、スピードが競争優位につながるビジネス環境では合理的な判断です。成功事例を参考に、自社に最適化した仕組みを構築できます。
高度な専門性が必要な領域
M&Aのデューデリジェンス、会計・税務の最適化、法務対応、セキュリティ強化、規制対応、ERP導入など、専門資格や深い経験が求められる領域では、外部専門家の活用が合理的です。
これらの分野では、社内に知識を持つ人材がいないことも多く、育成にも時間がかかります。専門性の高い課題に対しては、その領域に特化したコンサルタントを活用することで、リスクを軽減できます。
社内政治の突破に外圧が必要
既得権益層や変化に抵抗する勢力を動かすには、社内の論理だけでは限界があります。長年続いてきた慣習や組織構造を変革しようとする際、内部からの提案は却下されやすい傾向があります。
しかし「外部の専門家も同じ結論」という事実が、変革の推進力となることがあります。第三者としての客観性を持つコンサルタントの存在が、社内政治を突破する「外圧」として機能するのです。
【セルフチェック】コンサルを使うべきか判断する5つの質問
コンサル活用の要否を判断するため、以下の5つの質問に答えてみてください。これらの質問に対して「NO」が多いほど、コンサルタントの活用を検討する価値があります。逆に「YES」が多ければ、自社で取り組む選択肢が現実的です。自社の状況を客観的に見つめ直すチェックリストとして活用してください。
質問1:解くべき「問い」は明確になっているか
解決すべき問題が明確に特定できているなら、解決手段の選択肢は広がります。社内で対応できる可能性も高まるでしょう。逆に「そもそも何が問題なのか分からない」という状態であれば、問いを立てる支援が必要かもしれません。
課題の設定段階から外部の視点を入れることで、より本質的な解決策にたどり着ける可能性があります。問題定義の精度が、プロジェクト全体の成否を左右します。
質問2:意思決定者のコミットメントは得られているか
経営トップや意思決定者が本気でプロジェクトに関与する姿勢がなければ、どれだけ優秀なコンサルタントを入れても成果は出ません。報告書を受け取るだけで終わり、実行に移されないケースは多々あります。
コミットメントがない状況でコンサルを導入しても、費用の無駄遣いになりかねません。まずは社内の意思決定者の本気度を確認し、必要であればそこから整えることが先決です。
質問3:推進する体制とリソースは確保できているか
専任担当者、または十分な稼働時間を確保できるプロジェクトマネージャーやメンバーがいるでしょうか。本業と兼務で片手間に対応する体制では、どんな優れた戦略も実行できません。
社内リソースが不足しているなら、コンサルに「推進力」を期待する価値が生まれます。体制構築の支援を含めて依頼することで、プロジェクトの成功確率を高めることができます。
質問4:必要なデータや情報へのアクセスは可能か
コンサルタントは魔法使いではありません。分析や提案を行うためには、社内のデータや現場の情報が不可欠です。
機密情報へのアクセス制限、データの散在、現場へのヒアリング拒否など、情報提供に障壁がある場合、コンサルを入れても十分な成果は得られません。必要な情報へのアクセスを確保できる環境を整えることが、プロジェクト成功の前提条件となります。
質問5:過去に類似の取り組みで失敗した経験はあるか
自社単独で同様の課題に挑戦して失敗した経験があるなら、何が足りなかったのかを振り返る価値があります。推進力の不足か、専門知識の欠如か、社内政治の壁か——失敗要因を特定し、外部支援で補完できるかどうかを検討してください。
過去の失敗経験は、コンサル活用の判断材料として有用です。同じ過ちを繰り返さないための学びを得ましょう。
コンサルを使うなら失敗しない「発注の鉄則」
コンサル活用を決めた場合、発注の仕方によって成否の8割が決まると言っても過言ではありません。多くの失敗プロジェクトは、発注段階での曖昧さに起因しています。以下の4つの鉄則を押さえることで、「コンサルを使って良かった」という結果に近づけます。成果を最大化するための発注ノウハウを身につけてください。
鉄則1:ゴールと成果物を具体的に定義する
「経営改善」「DX推進」「業務効率化」といった抽象的な目標では、プロジェクトは迷走します。「何がどうなれば成功なのか」を数値目標や具体的な成果物で定義することが不可欠です。
売上10%向上、コスト20%削減、新規事業の事業計画策定など、明確なゴールを設定してください。曖昧なゴールからは曖昧な成果しか生まれません。定量的な評価基準を事前に合意することが重要です。
鉄則2:役割分担を明文化し丸投げを排除する
コンサルタント、自社チーム、外部ベンダーなど、関係者それぞれの責任範囲を明確に定義します。「コンサルがやってくれるだろう」という曖昧な期待は、必ず裏切られます。
誰が何を担当し、どのようなアウトプットを出すのかを文書化してください。特に実行フェーズでの役割分担は詳細に詰める必要があります。責任の所在が曖昧なプロジェクトは、確実に失敗へと向かいます。
鉄則3:担当者の経験と稼働をコミットさせる
提案プレゼンテーションを行ったシニアコンサルタントではなく、実際にプロジェクトで稼働するメンバーの経歴と稼働率を確認してください。若手中心のチーム編成で品質が低下するリスクを事前に把握することが大切です。
また、途中での担当者交代についても事前に合意しておきましょう。人材の質と稼働時間は、成果に直結する重要な要素です。
鉄則4:実行フェーズまでの伴走を設計に組み込む
提案で終わらせず、実行から定着までコンサルタントの関与を契約に組み込みます。戦略は実行されて初めて価値を持ちます。必要に応じて、成果報酬型や長期伴走型の契約形態も検討してください。
「絵に描いた餅」で終わらせないためには、実行支援までを含めたスコープ設計が重要です。コンサルが去った後も成果が持続する状態を目指しましょう。
AI時代のコンサル活用——生成AIとの使い分け
生成AIの急速な進化により、コンサルタントに依頼すべき領域は確実に変化しています。従来コンサルが担っていた業務の一部は、AIで代替可能になりつつあります。
一方で、AIには困難な領域も明確に存在します。両者の特性を理解し、最適な使い分けを実践することで、コストを抑えながら成果を最大化できます。
AIで代替可能な領域——コンサル不要になりつつある仕事
情報収集と整理、競合分析レポートの作成、資料のドラフト作成、データの可視化、定型的なフレームワーク適用など、パターン化できる業務はAIが得意とする領域です。
市場調査や業界動向の把握も、生成AIを活用すれば短時間で実施できます。これらの作業に高額なコンサルフィーを払う必要性は、急速に薄れています。AIツールの活用スキルを社内で高めることが、コスト削減につながります。

AIでは代替困難な領域——コンサルの価値が残る仕事
利害関係者との調整、組織内の合意形成、現場での実行推進、責任を伴う意思決定の後押し、複雑な人間関係のマネジメントなど「人を動かす」領域はAIには困難です。
また、企業固有のコンテキストを深く理解した上での判断や、経営者の背中を押す役割もAIには担えません。これらの領域では、経験豊富なコンサルタントの価値が引き続き高く評価されます。
実践:AIを社内コンサルとして活用するフロー
ChatGPTやClaudeなどの生成AIを、日常的な情報整理や壁打ち相手として活用する体制を構築すれば、コンサルに依頼する範囲を絞り込めます。
具体的には、論点整理をAIで行い、仮説を立ててAIと壁打ちし、その結果を基に社内で議論、本当に必要な部分だけ外部専門家に相談するというフローが有効です。このアプローチにより、コンサル費用を大幅に削減しながら、同等以上の成果を得ることが可能です。

コンサルに頼らない「自走型組織」のつくり方
最終的には、コンサルタントに依存しない自走型組織を目指すべきです。外部支援は「卒業」を前提に設計することで、真の成果につながります。
コンサルを活用する場合も、いずれは自社だけで課題解決できる状態を目標とすることが重要です。ここでは、自走型組織を構築するための3つのステップを解説します。
戦略思考を社内に根付かせる
経営層だけでなく、ミドルマネジメント層が自ら課題を設定し、仮説を立て、検証するサイクルを回せるようになることが目標です。
外部研修の受講やコンサルとの協働プロジェクトでのOJTを通じて、戦略思考の型を社内に伝播させます。
特定の個人に依存せず、組織全体として問題解決能力を高めることが、自走型組織の土台となります。日々の業務の中で思考力を鍛える文化を醸成しましょう。
推進体制(PMO機能)を内製化する
プロジェクト推進の専任チームを社内に設置し、変革プロジェクトを自前で回せる体制を整えます。最初はコンサルタントと協働しながらノウハウを吸収し、徐々に内製比率を高めていく設計が現実的です。
PMO機能を持つ人材を育成することで、外部支援への依存度を下げられます。自社内で完結できる業務領域を着実に拡大していくことが、長期的なコスト削減と組織能力向上につながります。
ナレッジを仕組み化し人に依存しない状態をつくる
プロジェクトで得た知見を、ドキュメント、プロセス、ツールとして残し、担当者が変わっても再現できる状態を目指します。暗黙知を形式知に変換し、組織の資産として蓄積することが重要です。
コンサルを活用する場合も、ナレッジ移転を契約条件に組み込むことで、外部の知見を「一過性の支援」ではなく「永続的な資産」に変換できます。人に依存しない仕組みづくりが、真の成長をもたらします。
よくある質問(FAQ)
コンサル活用に関して読者が抱きやすい疑問に、先回りして回答します。以下のFAQを参考に、自社にとって最適な判断を行ってください。
まとめ:「コンサルいらない」時代の正しい判断軸
「コンサルはいらない」という声には、構造的な理由があります。高額なフィー、現場との乖離、提案止まりで実行されない——これらの批判は的を射ています。しかし一方で、問題設定の支援、推進力の補完、専門知識の提供、第三者としての客観的な視点など、コンサルでなければ担えない役割も存在します。
重要なのは「コンサルは必要か不要か」という二項対立ではありません。「自社の状況において、何をコンサルに頼み、何を自前でやるか」を冷静に判断することです。本記事で紹介したセルフチェックと判断基準を活用し、あなたの会社にとって最適な選択をしてください。
そして最終的には、コンサルに依存しない自走型組織を目指すことが本質的なゴールです。外部支援を「卒業できる関係」として設計することで、組織は本当の意味で成長していきます。AI時代においても、この原則は変わりません。


